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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『文鳥・夢十夜』 夏目漱石 牛乳が苦手

   

書評的な読書感想文298

『文鳥・夢十夜』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

夏目漱石【夏目漱石さんの他の作品】(作家別索引

レーベル 1976年7月 改版2002年9月

エッセイ ノンフィクション(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

エッセイが大半の作品集。明治時代の文章に苦戦し、眠くなることもありましたが、漱石の考えが書いてあるので興味深く読めました。表題作も良いですが「永日小品」「思い出す事など」「手紙」が面白かったです。

 

あらすじ

人に勧められて飼い始めた可憐な文鳥が家人のちょっとした不注意からあっけなく死んでしまうまでを淡々とした筆致で描き、著者の孤独な心持をにじませた名作『文鳥』、意識の内部に深くわだかまる恐怖・不安・虚無などの感情を正面から凝視し、〈裏切られた期待〉〈人間的意志の無力感〉を無気味な雰囲気を漂わせつつ描き出した『夢十夜』ほか、『思い出す事など』『永日小品』等全7編。(作品紹介より)

 

大学の授業で『夢十夜』

以前『坊っちゃん』を読んで思っていたよりも面白かったので、今回はこの作品に挑戦です。なぜこの作品かというと、十数年も前のことですが、大学の授業で『夢十夜』を読んだことが印象にすごく残っていたので再読してみました。

 

当時の授業の内容はもちろん、『夢十夜』の内容も全く覚えていないのですが、幻想的で不思議な物語だったという印象だけが強く残っていました。久しぶりに読んでみると、やはりシュールで幻想的な世界観が印象的で、十話の短編のうちラストに驚きのある第三夜と第五夜が面白かったです。

 

ただ、『文鳥』もそうなのですが、さらっと読み進めるスタイルよりもじっくり何度も読み返すスタイルで読んだ方がより楽しめると思いました。それこそ、大学の授業のように。読みたい本がたくさんありすぎで、今は一冊を繰り返し読むことはしませんが、ちょっともったいない気もしました。

 

「永日小品」「思い出す事など」

この二つの作品は、漱石らしき人物を主人公にしたエッセイ風の文章で、独特で印象的な描写や漱石の考え方が端々に書かれていて楽しめました。ただ、『坊っちゃん』とは違い、明治時代の文体に苦戦して眠くなることも多かったです。

 

印象的な描写としては、食欲のないときに飲まされる牛乳について

吸飲の中に、動く事の出来ぬほど濁った白い色の漲る様を見せられた時は、すぐと重苦しく舌の先に溜まるしつ濃い乳の味を予想して、手に取らない前から既に反感を起した。(P204)

と、なかなかの拒絶っぷりをしめしてます。

 

空気についての漱石の考えも面白いです。

(管理人註:前略)人間のために出来た空気ではなくて、空気のために出来た人間なのである。今にもあれこれこの空気の成分に多少の変化が起るならば、(中略)吾等は悉く死んでしまわねばならない。(P186,187)

漱石は温暖化ではなく地球が冷却してしまうことを懸念していたようですが、今読んでもちょっと鋭いなと思いました。

 

「手紙」

「手紙」もとても印象に残った作品です。主人公の漱石らしき人物が、ある知り合いの青年に頼まれて妻の親戚の女性を見合い相手として紹介しました。その青年・重吉は自分から頼んだ見合いなのに中途半端なままで地方に就職してしまいます。どういうつもりか問いただすために、漱石が重吉を尋ねます。

何で重吉が見合いをほったらかしているかの謎が解かれるミステリー要素があって、この作品集の中では一番小説らしさがある作品です。また、ラストシーンでの重吉の本心を知った漱石と漱石があえて伝えなかったために本心を知らない漱石の妻の、重吉に対する評価の対比が印象的でした。

 

書評的な読書感想文のまとめ

漱石の独特の表現や考え方分かる作品で、興味深く楽しめました。ただ、私のように単純に読み物として楽しもうとすると、眠くなる文体もあって、『坊っちゃん』よりも落ちるって事で、おすすめ度は星三つです。

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