おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『京都ぎらい』 井上章一 京都好きも楽しめます

   

書評的な読書感想文293

『京都ぎらい』(新書)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

井上章一(作家別索引

朝日新書 2015年9月

ノンフィクション エッセイ(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

斜に構えた視点で見た京都の文化や歴史が面白い。卑屈になりすぎていて鼻につくところもありますが。個人的には拝観料が無課税の理由やお坊さんと祇園の関係の話が面白かったです。京都大好き人間ですが、とても楽しめました。

 

あらすじ

あなたが旅情を覚える古都のたたずまいに、じっと目を凝らせば……。気づいていながら誰もあえて書こうとしなかった数々の事実によって、京都人のおそろしい一面が鮮やかに浮かんでくるにちがいない。洛外に生まれ育った著者だから表現しうる京都の街によどむ底知れぬ沼気(しょうき)。洛中千年の「花」「毒」を見定める新・京都論である。(作品紹介より)

 

京都市民だけど京都人ではない

「京都ぎらい」とかなりインパクトのあるタイトルの本書ですが、要するに京都を論じた本という意味では、まあ、ありがちです。ただし、その論じる角度がかなりひねくれているのが特徴的です。

 

では、なぜそんなひねくれているのか?そのわけは、作者の井上さんの出身に関係します。井上さんは京都市の花園というところで生まれ、嵐山に近い、嵯峨というところで育ったそうです。嵯峨という場所は、京都の中心街、洛中といわれる場所からは外れた郊外の街だそうです。

 

この嵯峨という街は洛中に住む人からは、「嵯峨そだちだったのか、京都の人じゃあなかったんだな」(P15)と京都市内なのに、京都扱いされない街だそうです。

 

この洛中の人たちの中華思想とも言うべき洛中絶対主義はかなり根強いようで、ことあるごとに嵯峨育ちを揶揄されてきた作者は、洛中に対して強いコンプレックスを持つようになります。結果、「京都ぎらい」なんていう本を出すことになります。

 

コンプレックスが強すぎて、洛中に対して卑屈になりすぎるきらいはありますが、京都のいやらしさやあまり表向きにならない京都の文化や歴史を書いてる本書は、他の京都本とは一線を画した面白さがあります。

 

拝観料は非課税

いろいろ面白い話はたくさんありますが、個人的に面白かった話をいくつか紹介します。その一つが、お寺などに入場する際に支払う拝観料には税金がかからないという話。

 

名目的には拝観料は、参拝者からの寸志、宗教的な献金だから課税されないとされています。ただ、参拝者からしたら、宗教的な出費とは考えず、テーマパークの入場料と同じ感覚で払っていると思います。大人何円と、支払うべき金額が決められているのに、お布施とは思えないはずです。

 

過去には役所も同じように考え、拝観料に税金をかけていた時代があったそうです。しかし、それに反発したいくつかの有名寺院が強烈なしっぺ返しをしたことで、この税金は廃止され拝観料は非課税になりました。

 

有名寺院がどんなことをしたかは本書を読んで確かめてみて欲しいのですが、その昔、僧兵や一揆などで時の権力者たちに対抗した豪胆さが現代にも受け継がれているのが分かります(もちろん暴力的手段ではありませんが、ごり押しで法律を曲げようとするところは一緒だと思いました)。

 

お坊さんと祇園

いまでは全国的にかなり下火になってしまった花街ですが、京都の祇園周辺にはまだまだ芸舞子さんがたくさんいます。そんな祇園とお坊さんの関係で面白い話が載っていたので紹介します。

 

昔は、京都の花街を賑わわせていた人は呉服商人と太秦で撮影をしていた時代劇の映画関係者だったそうです。ただ、今ではその二つとも下火になってしまっていて、今では祇園周辺を潤わす存在ではないそうです。

 

では、これに変わって今の京都の花街を潤わしているのは誰かというと、お坊さんだそうです。京都以外の地域では考えられませんが、お坊さんが僧服を着たまま、芸子さんと料理屋で食事をしていることがあるそうです。一般人やもちろん檀家さんとも遭遇しかねないシチュエーションで。

 

他にも、お坊さんがクラブのホステスさんと同伴出勤をしているなんてこともあるそうです。もちろん基本的には、私服だったり、スーツで遊ぶことが多いそうですが、僧服で花街やクラブに繰り出すことも普通にあるそうで、さすが京都って思うエピソードです。

 

書評的な読書感想文のまとめ

上のような話以外にも、昔のお寺は武将を泊めるホテル的機能があった話など、アカデミックな話もありました。

 

私は今まで何度も京都に行ったことがある京都好きですが、うすうす噂では聞いていたので、京都の嫌な面が書かれていても特に幻滅するようなことはありませんでした。むしろ、知らない話がいっぱいあって楽しめましたってことで星四つです。

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