おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ふるさと銀河線 軌道春秋』 高田郁 川富士立夏で漫画原作

   

書評的な読書感想文292

『ふるさと銀河線 軌道春秋』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

高田郁(作家別索引

双葉文庫 2013年11月

人間ドラマ 家族(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

人間ドラマを描いた短編集でどの作品も電車がキーアイテムになっています。作品全体を通したテーマはないのですが、しっとりとした読後感は共通しています。特に、困難に立ち向かっている人を描いた物語が印象的です。

 

あらすじ

両親を喪って兄とふたり、道東の小さな町で暮らす少女。演劇の才能を認められ、周囲の期待を集めるが、彼女の心はふるさとへの愛と、夢への思いの間で揺れ動いていた(表題作)。苦難のなかで真の生き方を追い求める人びとの姿を、美しい列車の風景を織りこみながら描いた珠玉の短編集。(作品紹介より)

 

川富士立夏で漫画原作

今回の物語は以前紹介した『みをつくし料理帖』シリーズの高田郁さんの作品。高田さんというと時代物の印象が強いのですが、今回は現代を舞台にした、しっとりとした読後感の人間ドラマを集めた短編集になっています。電車がキーアイテムになっていて、そのためにサブタイトルに「軌道春秋」とついています。

 

作品の制作経緯がちょっと変わっています。高田郁さんは、小説家になる前に川富士立夏のペンネームで漫画原作者としてデビューしていて、そのとき原作で書いた作品の一つが『軌道春秋』です。今回の作品はその漫画の中のいくつかの話を小説に仕立て直して出来上がりました。

 

「あなたへの伝言」

私が印象に残った二つの短編を紹介します。一つは「あなたへの伝言」。主人公は半年前までアルコール依存症だった女性、みゆきです。彼女はアルコール依存症から脱するために、旦那と別居し、一人再発におびえる日々を暮らしています。

 

彼女の心の支えは断酒の会で知り合った、アルコール依存症を脱して三年以上たつ女性、真紀でした。アルコール依存症から脱し、円満な家庭を気づいている真紀は主人公のみゆきの憧れです。

 

しかし、ささいなきっかけで真紀は再飲酒をしてしまい、家庭はめちゃくちゃになってしまいます。そんな真紀の姿を目の当たりしてショックを受けるみゆきですが、何とか前向きな気持ちを取り戻すところで物語は終わります。

 

真紀が酔いつぶれた描写が生々しく、それを目撃したみゆきは絶望感すら感じてしまいます。ただ、そこから正気を取り戻し、前向きになる過程が、そこまでの間に張られた伏線の効果もあってとても印象的に描かれます。

 

「晩夏光」

アルツハイマーを発症した女性とその息子の話。同じくアルツハイマーをテーマにした『明日の記憶』のときも思いましたが、作家さんはどちらもすごいなと。作者が体験したことのないはずのアルツハイマーにかかった人の恐怖心がしっかり描写されていて、同じく体験したことのない私にも伝わってきて、背筋が寒くなりました。

 

また、アルツハイマーにかかったと分かったときに主人公が息子に宛てて手紙を書くのですが、親子それぞれの心情が想像できてちょっと泣けてしまいます。

 

書評的な読書感想文のまとめ

私の印象に残った作品は二つとも困難に立ち向かう人を描いたかなり重めの内容でしたが、そういった話ばかりではありません。祖父と孫の交流描いた「ムシヤシナイ」やふるさとの小さな町に残るか、出るかでなやむ少女を描いた表題作の「ふるさと銀河線」など心温まる作品もあります。ただ、どの話も派手で明るい作品ではなく、ちょっとしんみり、しっとりした読後感の作品ということは共通しています。

 

印象的な短編が多いのですが、残念ながら『みをつくし料理帖』は越えられてないって事で星三つです。

高田郁さんの他の作品

作家別索引

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