おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『初陣 隠蔽捜査3.5』 今野敏 主役は伊丹、存在感は竜崎

   

書評的な読書感想文291

『初陣 隠蔽捜査3.5』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

今野敏【今野敏さんの他の作品】(作家別索引

新潮文庫 2013年2月

警察 ミステリー(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

伊丹を主人公にしたスピンオフ短編集。人間くさい伊丹のキャラも良いのですが、やっぱり竜崎の存在感が凄いです。煮詰まった状態が竜崎のひと言で解決するのは爽快です。あと、正論過ぎてちょっと笑えます。

 

あらすじ

警視庁刑事部長を務めるキャリア、伊丹俊太郎。彼が壁にぶつかったとき頼りにするのは、幼なじみで同期の竜崎伸也だ。原理原則を貫く男が愛想なく告げる一言が、いつも伊丹を救ってくれる。ある日、誤認逮捕が起きたという報に接した伊丹は、困難な状況を打開するため、大森署署長の竜崎に意見を求める(「冤罪」)。『隠蔽捜査』シリーズをさらに深く味わえる、スピン・オフ短篇集。(作品紹介より)

 

「隠蔽捜査」シリーズのスピンオフ

以前紹介した『隠蔽捜査』、『果断 隠蔽捜査2』『疑心 隠蔽捜査3』の「隠蔽捜査」シリーズのスピンオフ作品です。この巻から読んでも楽しめないことはないのですが、スピンオフ作品なので本編三冊を読んで竜崎や伊丹のキャラクターをつかんでから読んだほうが絶対に楽しめます。

 

とにかく面白いシリーズなので第一弾から読むことをおすすめします。

 

主人公は伊丹

今回の作品の主人公は伊丹俊太郎です。本編の主人公・竜崎の幼馴染でライバルで、原理原則を貫き己の信じる道を突き進む変人・竜崎に対し、周囲の評価を気にして自分を装い、出世に意欲を燃やす伊丹は人間くさくて読者が感情移入しやすいキャラになっています。

 

今回の作品はそんな伊丹が警察内部の問題や殺人事件などさまざまな問題に直面したときに、人間くさく、バランスをとったり、周囲の評価を気にしたりと右往左往する短編集になっています。

 

そして、物語の最大の見所は、手詰まりになったと思われる問題や事件が、原理原則第一の竜崎の一言で見事に解決するところです。伊丹に感情移入していた私は、ついつい常識的な考えに囚われていて、竜崎の発言に何度も驚かされました。

 

存在感は竜崎

物語は伊丹の一人称で進むので、主人公はもちろん伊丹です。ただ、上にも書いたように竜崎の一言で事件が一気に解決する構造の短編が続くので、存在感は圧倒的に竜崎が上です。

 

例えば、「指揮」では、伊丹が警視庁の刑事部長に着任する直前に、元々いた福島県警で殺人事件が起きます。殺人事件の指揮を最後まで執りたいのが本音の伊丹ですが、刑事部長着任を回避するわけにもいかず、悩みます。

 

そんな悩みを竜崎の「両方同時にやれ」という一見無茶な一言で解決するのが爽快なのですが、その後のセリフが名言です。

「そうだ。幹部の権限というのは何のためにあると思っているんだ。横車を押すのはよくない。だが、合理的な判断を実行するためになら、遠慮なく行使すべきだ。そうじゃないか?」(P44)

正論ですが、組織の中でこれがはっきり言える人はなかなかいないでしょう。

 

また、「病欠」では、伊丹が殺人事件の捜査本部を設置しようと人を集めようとしますが、インフルエンザが蔓延していて捜査員の人数が集まりません。ただ、竜崎のいる大森署だけは必要な人員を用意できます。

 

何で誰もインフルエンザにかかっていないのかと、疑問を口にした伊丹に対し、竜崎はド直球の正論を返します。何て言ったかは読んで確認して欲しいのですが、ようは完璧に近いほど予防をしたということです。ただ、正論は正論なのですが、ここまでできる人はなかなかいないと思います。

 

正論過ぎてちょっと笑えました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

今回の作品の中では変り種の話が「試練」です。『疑心 隠蔽捜査3』の前日譚的な話で、竜崎が恋をしてしまう畠山美奈子がどういった経緯で竜崎の秘書になったかが描かれています。本編を読んだ人はちょっと楽しめると思います。

 

それ以外の作品は、上にも書いたように竜崎の一言が事件を解決する話で、スピンオフ短編集として十分に楽しめます。ただ、あくまで本編のおまけかなって思うので、おすすめ度は控えめの星三つです。

今野敏さんの他の作品

作家別索引

警察の他の作品

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆ , ,