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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『砂のクロニクル』 船戸与一 イランが舞台なのになぜか身近

   

書評的な読書感想文288

『砂のクロニクル 上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

船戸与一(作家別索引

小学館文庫 2014年5月

サスペンス 戦争(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

骨太な物語。イランの民族紛争がテーマ。テレビの中でしか知らない世界にも、英雄や悪人ではない普通の人間が生きていきていて、考え、苦しみ、もがいています。私とは縁遠いと思った世界が不思議と身近に感じられました。

 

あらすじ

日本文学史上類を見ない壮大なスケールで民族問題の裏側を描く。船戸与一最高傑作。舞台は、イラン。二人の日本人が激動のペルシアの地で民族紛争の渦に飲まれていく。イスラム革命が成功したイラン。革命防衛隊は権力を手にしたものの内部から腐敗が進み始める。対してイランの片隅で生きるクルド人が、独立国家樹立を目指し、武装蜂起を目論む。武器の調達を依頼された日本人武器密輸商人・ハジ。なぜ日本人である彼が、国際社会の裏舞台で暗躍することになったのか。クルド人のために、無事、武器を供給できるのか……。息もつかせぬ怒涛の物語、上巻。(上巻作品紹介より)

 

イランを舞台にした山本周五郎賞受賞作

イランを舞台にした山本周五郎賞受賞作品。読んだ一番の感想は骨太。

 

イラン・イスラム革命が成功し、イラクとの戦争が始まったイランにおいて、謎の日本人革命家の活動の様子や、別の日本人武器商人の様子を描いたところから物語りは幕を開けます。

 

ただ、この二人の日本人が物語の主人公かというとそういうはなく、イランの指導者ホメイニの直属の軍隊である革命防衛隊の小隊主人のサミル・セイフやイラン政府と敵対するクルド人ゲリラの指導者、ハッサン・ヘルムートなどの人物が主人公の章もあります。

 

特定の主人公がいる物語というよりは、何人もの主人公の目を通してイランの裏側を描いた物語といえます。

 

テレビの中の出来事がリアルに

イランが舞台の物語といっても、テレビの中でテロや民族紛争で取り上げられる中東の国の一つといった程度の知識しか持たない私なので、読み始めた当初はかなり戸惑いました。

 

ただ物語を読み進めるうちに、革命や戦争、民族紛争が巻き起こるイランの中にも、英雄や悪人ではない私と同じ普通の人間が生きているのが分かってきました。

 

革命防衛隊の小隊主人のサミル・セイフが、腐敗していく革命防衛隊を苦々しく思う気持ちなどは、私が同じ立場だったらきっと同じことを感じると思いました。また、クルド人ゲリラの指導者、ハッサン・ヘルムートが身内を殺してしまい苦しむ友人を思う気持ちにも共感できました。

 

イランという遠い地の、自分の正義のために人を殺すことも辞さない青年たちが、さまざまなことを考え、苦しみ、もがいている様子が描かれていて、不思議と共感でき、身近に感じることができました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

序盤の日本人がメインの話のときは、遠い国の物語を読んでいる気分でした。それが、イランに生きる青年たちを主人公とした物語に移行した後は、青年たちの心情に共感でき、不思議と物語を身近に感じることができました。

 

大長編な上に、民族問題をテーマにした骨太な物語ですが、最後は我が事のように考えながら読むことができたってことで、おすすめ度は星四つです。

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