『本日は、お日柄もよく』 原田マハ 十五秒待つ
書評的な読書感想文287
『本日は、お日柄もよく』(文庫)
おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明)
原田マハ(作家別索引)
徳間文庫 2013年6月
お仕事 青春(ジャンル別索引)
おすすめポイントをほぼ百文字で
お仕事小説としてはありがちな話ですが、
あらすじ
OL二ノ宮こと葉は、
想いをよせていた幼なじみ厚志の結婚式に最悪の気分で出席してい た。 ところがその結婚式で涙が溢れるほど感動する衝撃的なスピーチに 出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。 空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉はすぐに弟子入 り。久美の教えを受け、「政権交代」 を叫ぶ野党のスピーチライターに抜擢された! 目頭が熱くなるお仕事小説。(作品紹介より)
ザ・お仕事小説
なんだかとてもキャッチーなタイトルの今作品。前々から気になっていた原田マハさん初読みです。
物語は、主人公のこと葉がスピーチを考えるお仕事・スピーチライターとして成長するお仕事小説。挫折があって成長があり、ライバルがいて恋もある、ストーリーはわりとありがちなお仕事小説になっています。
ただ、ありがちで物語の展開は読めてしまうのにもかかわらず、読む手をとめることができませんでした。特に、こと葉がスピーチライターとして参戦する、衆議院選挙の話は手に汗握る展開で盛り上がりました。
心揺さぶるスピーチ
物語のテーマはスピーチです。たぶん私たちが行う可能性の一番高い結婚式のスピーチから、政治家が行う選挙演説でのスピーチまで幅広く取り上げています。
例えば、結婚式のスピーチについては
そして、壇上に上がって、まず五秒待つ。会場が静かになるのを。五秒で無理なら、十秒。それでもだめなら十五秒。(中略)スピーチの導入部も、あくまで静かに始める。始め方はさまざまだが、「ただいまご紹介にあずかりました」とか「ひとことお祝いを述べさせていただきます」のような、無駄な枕詞は極力避ける。いきなりエピソードから始めてもいい。結論を先に言ってしまってもいい。とにかく、最初のフレーズがどんな風に聴衆の耳に届くか。それでそのスピーチの印象が決まる。(P81)
なんて、書かれています。十五秒も待つって、けっこう度胸がいりそうです。
また、政治演説では、オバマ元大統領の、大統領選挙の際のスピーチを
「そう。この人(管理人註、オバマ氏のこと)、英語という言語の可能性を広げた、っていうくらい、とにかくスピーチが上手い。(以下略)」(P116)
なんて評してます。
そして、物語の中では、結婚式のスピーチや選挙演説のスピーチなどが物語の山場で出てくるのですが、どれも感動的で、読んでいて目頭が熱くなることもしばしばありました。
この感動的なスピーチのおかげで物語に説得力が生まれているといえます。どんなものかは実際に読んで確かめて欲しいのですが、いくつかあるスピーチを読むだけでもこの本を買う価値が十分にあるのではと思います。
書評的な読書感想文のまとめ
一点だけ残念な点を言えば、私たちの役に立つスピーチのコツなどうんちくが少ないかなと。ただ、選挙の話は盛り上がりますし、スピーチは感動的で、最後まで物語を楽しめました。原田マハさんの他の作品も読みたくなったってことで、おすすめ度は星四つです。
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