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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『きりしたん算用記』 遠藤寛子 キリシタンの物語

   

書評的な読書感想文286

『きりしたん算用記』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

遠藤寛子【遠藤寛子さんの他の作品】(作家別索引

PHP文芸文庫 2012年10月

人間ドラマ 時代(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

キリシタンに懐疑的な少女とキリシタン女性との交流が見所。また、江戸時代初期のキリスト教弾圧が強まる中、教徒たちがどう立ち回ったのかが描かれているのも興味深いです。ただ、和算の話はほとんどないのが残念です。

 

あらすじ

天涯孤独な少女・小菊は、京の北野天神で妙齢の女性に救われた。彼女はルチアといった。キリシタンなのだ。聡明な小菊を見込んで、読み書きや算法を学ばせるルチア。しかしキリシタン弾圧が強まるなか、平穏な日々は続かない……。若き日の吉田光由(与七)が脇を固め、のちに彼が著す『塵劫記』と小菊の意外な逸話が明らかになる。和算の黎明期を舞台に、小菊の成長とルチアの美しい心が胸に響く傑作。

 

やっぱり和算の問題は出てきません

以前紹介した『算法少女』の遠藤弘子さんの作品です。『算法少女』は1973年に出版され、2006年に30年以上ぶりに復刊されましたが、この作品も1976年に出版したものが2012年に文庫本として復刊されました。

 

どちらの物語も児童書として出版された作品で、主人公の少女が和算やいろいろな人との出会いを通して成長する物語です。そして、ちょっと残念なことにどちらも和算の問題はあまり出てきません。

 

江戸時代初期のキリシタン

物語は江戸時代初期の京都を舞台にしています。天涯孤独で路頭に迷っていた10歳の少女・小菊がルチアという名の女性に拾われるところから始まります。ルチアという女性はキリシタンで、当時はちょうどキリシタンに対する弾圧が強まっていた時期でした。

 

キリシタンに対して作中でこんな記述があります。

キリシタン――それは、この時代の多くの人々にとって、あやしく、恐ろしいひびきを持ちはじめていた。

あの人はキリシタンじゃそうな、という時、人びとは、尊敬とおそれのいりまじった目でその人を眺めた。(P27)

キリシタンに対して小菊は

小菊はくちびるをふるわせていた。

(この人たちは、やっぱりキリシタンの魔法を使うんだ。月食をあてたり、暦を作りかえる話も平気でしているんだもん)(P36)

なんて感想を抱いています。

 

ルチアに読み書きや算術を習うことになった小菊は、学問に対しては興味をどんどん深めます。ただ、キリスト教に対しては常に懐疑的な気持ちを持っています。このキリスト教に懐疑的な小菊とキリシタンのルチアの交流が物語の見所の一つです。

 

個人的には小菊がキリシタンの考えに心の中で反発しているところに共感できて、小菊側の視点から物語を楽しめました。

 

キリシタン弾圧の様子

物語のもう一つの見所は、キリシタンが弾圧に対してどう立ち回ったかが描かれているところです。些細なきっかけでルチアはキリシタンであることがばれてしまい、小菊と共に住んでいた町から逃げることになります。その際に、ルチアたちはキリシタンの隠れ里に逃げ込むことになります。

 

こうした物語の中で、キリシタンの隠れ里の様子や当時のキリシタンたちがどうやって弾圧から逃げていたのかが分かり、興味深く読めました。

 

書評的な読書感想文のまとめ

和算を題材にした物語というよりは、キリシタンの女性と少女の交流を軸に江戸時代初期のキリシタンの様子を描いた物語といえるでしょう。そういった意味では、児童書ながらそれなりに楽しめたってことで星三つです。

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