おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『中庭の出来事』 恩田陸 劇中劇中劇

   

書評的な読書感想文282

『中庭の出来事』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

恩田陸(作家別索引)(恩田陸さんの他の作品

新潮文庫 2009年8月

ミステリー サスペンス(ジャンル別索引

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

劇中劇中劇まである構成で、いつ面白くなるんだろうと、混乱する頭を整理しつつ読みました。読み返せばもっと面白くなるのは解りますが、正直そこまでしようとは思わないです。要所要所に見える作者の物の見方が興味深い。

 

あらすじ

瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。容疑は、パーティ会場で発表予定だった『告白』の主演女優候補三人に掛かる。警察は女優三人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする――という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて……。虚と実、内と外がめまぐるしく反転する眩惑の迷宮。芝居とミステリが見事に融合した山本周五郎賞受賞作。(作品紹介より)

 

今、日本で一番話題の作家の山本周五郎賞受賞作

『蜜蜂と遠雷』で直木賞と本屋大賞を同時受賞した、今、日本で一番話題の作家、恩田陸さんの山本周五郎賞受賞作品。直木賞と本屋大賞の同時受賞には賛否あるようですが、個人的には書き手と読み手の両方に支持された作品なのでいつか読んでみたいです。

 

三層の物語

で、今回の作品は、舞台がテーマの作品なのですが、、、。その構造はなかなか複雑。現実の出来事。「中庭の出来事」という劇中劇。その「中庭の出来事」の中の物語である「告白」と三つの階層の物語になっています。

 

そして、それぞれの階層の物語の中で殺人事件が起きてしまいます。前半で混乱してしまうのは間違いなく解説を書いている小田島さんが

実は、ちょうど半分ほど読み進んだあたりでやっと、僕の単純な頭脳ではこの作品の魅力を隅々まで味わいつくすのは不可能、と気がついた。そこで、青と赤のボールペンと黒の鉛筆を手もとに置いて、冒頭から読み直し始めた、(管理人注:以下略)(P517)

なんて書いてあることからもわかるように、だいぶ読む側の気力を要します。

 

私はこの混乱がすっきりして、いつ面白くなるんだろうと期待しながら読みましたが、謎は解けたものの期待したすっきり感はあまりありませんでた。

 

たぶん上に書いた小田島さんのように、工夫しながら読み返せば絶対に一回目よりも面白く読めるとは思いますが、正直そこまで使用とは思いませんでした。

 

物の見方が面白い

今回の作品で印象に残ったことは、作中に出てくる登場人物の物の見方が面白いことです。例えば、ちょっとしたアイディアが頭に浮かびかけている瞬間について

田辺聖子のエッセイだったか、それを「猫を撫でるような感覚」と言っていた。手を伸ばしてそっと猫を撫でようとするが、いつもするりと逃げられる。今すぐそこに、手が届くところにアイディアがあるのは分かっているが、下手に手を伸ばすと消えてしまう。(P66)

なんて表現しています。また、

「結婚する前に、昔の男と会いたがるのも女だな。あれはどうしてだろうな。要するに、自分で自分を惜しんでいるんだな。他の男のものになる自分というものに、感傷的になっているわけだ」(P93)

と言っていたりもします。

 

おそらくは、恩田さんの考えが反映されているのでしょうが、私が思いつかない考え方なのに、すごく共感できて面白かったです。

 

書評的な読書感想文のまとめ

ちょっと実験的な作品で、読むのに労力が必要な割りにリターンが少ないのかなっていうのが正直な印象です。ただ、ミステリー的にはきちんと謎が解けますし、要所の登場人物の物の見方が面白いのでおすすめ度は星三つです。

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