おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ぼくらは海へ』 那須正幹 「ズッコケ三人組」と違いすぎ

   

書評的な読書感想文281

『ぼくらは海へ』(文庫)

おすすめ度☆☆(星数別索引&説明

那須正幹(作家別索引

文春文庫 2010年6月

青春 冒険(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

「ズッコケ」のイメージが強く最後まで違和感を感じました。特に終盤の展開は衝撃的。ただ、先入観なしで読めば、子ども社会だってきれいごとばかりではないことが、ノスタルジックな雰囲気でうまく描かれています。

 

 

あらすじ

船作りを思い立った5人の少年。それぞれ複雑な家庭の事情を抱えながらも、冒険への高揚が彼らを駆り立てる。やがて新たな仲間も加わるが――。発表当時、そのラストが多くの子どもの心を揺さぶった巨匠・那須正幹の衝撃作。30年の時を経て文庫版で登場です。かつて少年だった、すべての大人に贈ります。(作品紹介より)

 

ズッコケ三人組シリーズの作者

児童文学最大のベストセラーである「ズッコケ三人組」シリーズの作者、那須正幹さんの作品。単行本の初版は1980年で2010年に三十年ぶりに文庫化されました。ちなみに「ズッコケ三人組」シリーズの一作目が1978年なのでほぼ同時期の作品です。

 

私は小学生低学年のころに夢中になって「ズッコケ三人組」を読んだのですが、この作品のことは当時は全く知りませんでした。今回、本屋で那須正幹さんの名前を見て、懐かしくて手に取りました。

 

拭えなかった違和感

物語は開発途中で打ち捨てられた埋立地ではじまります。放置された工事用のプレハブ小屋をたまり場にしていた、主人公の誠史たち五人の小学生はひょんなきっかけで廃材を使って船を作ることを思い付きます。と、ここまでの展開で私は、「ズッコケ三人組」の主人公たちのような個性的でいい意味で小学生らしい子どもたちの、ワクワク感あふれる冒険物をイメージしました。

 

確かに冒険物的な部分もありました。さあ今から船を作ろうというシーンでは、胸が高まるのを感じたし、その後、作った船の試運転のときに、うっかり海へ落ちてしまったときはおかしくてちょっと頬が緩みました。

 

ただ、「ズッコケ三人組」のイメージが強い私には、この作品を読んでいて終始、違和感を感じました。そして、その違和感は最後まで拭われることはなく、むしろ終盤の衝撃的な展開で決定的な物になりました。

 

子ども社会の闇

違和感の元は子ども社会の闇を描いていることだと思います。主要キャラの5人の小学生はみんな家庭に何かしらの問題を抱えています。また、子どもたちの性格もちょっと陰湿だったり、無気力だったりといわゆる児童文学に出てくるキャラクターとは違った性格をしています。

 

グループ内で一番立場の弱い子である嗣郎はこんなことを感じています。

子どもたちには〈できる子〉と〈だめな子〉の二種類があると、嗣郎は確信していた。

嗣郎は小学校入学以来、いや、そのずっとまえ、ひょっとしたら生まれたときから、〈だめな子〉だった。〈だめな子〉は、どんなに努力しても〈できる子〉にはなれないし、大きくなれば、〈だめなおとな〉になるにちがいない。(P95)

児童文学らしくないシニカルな意見ですが、かなり真実をついていると思います。

 

これ以外にも冷めた目で親を観察していたり、主人公がちょっとしたいじめをしている描いています。私はズッコケのイメージが強かったので戸惑いましたが、フラットな視点で見直すと、子どもの社会だってきれいごとだけじゃないことをうまく描かれていると思います。

 

書評的な読書感想文のまとめ

1970年代の話だけあってノスタルジックな雰囲気で、少年たちの冒険と闇が描かれています。フラットな視点で見ればきれいごとだけじゃない子ども社会が描かれていて印象的ですが、なにしろ「ズッコケ」のイメージとかけ離れすぎています。特に終盤の展開は衝撃的過ぎです。

 

個人的には児童文学でここまで闇をえぐる必要はないのかなって思うのでおすすめ度は星二つです。

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