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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『廃墟に乞う』 佐々木譲 派手さはないが面白いその2

   

書評的な読書感想文278

『廃墟に乞う』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

佐々木譲(作家別索引

文春文庫 2012年1月

警察 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

登場人物の隠された心情から推理をする連作短編集。派手さはなく、物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、微妙な心理描写は秀逸です。特に兄弟姉妹の話が印象的でした。続編を期待する作品の一つになりました。

 

 

あらすじ

十三年前に札幌で起きた殺人事件と、同じ手口で風俗嬢が殺害された。道警の敏腕刑事だった仙道が、犯人から連絡を受けて、故郷である旧炭鉱町へ向かう表題作をはじめ北海道の各地を舞台に、任務がもとで心身を耗弱し休職した刑事が、事件に新たな光と闇を見出す連作短編警察小説。第百四十二回直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

デビュー31年目の直木賞受賞作

作者の佐々木譲さんがデビュー31年目にして受賞した、直木賞受賞作品。初めてのノミネートが第100回で38歳のときで、受賞が142回、59歳のときになります。

 

選評で「選考の席では、いまさら直木賞でもあるまい、という空気もあったが、デビュー作から三十一年という、そのたゆまぬ作家活動への敬意をふくめて今回の受賞となった。」なんてあることからも新進・中堅作家が対象の直木賞としてはちょっと異例の作品といえるかもしれません。

 

ただ、作品のクオリティーはもちろん受賞にふさわしいもだと思います。

 

 

派手さはないが心理描写が秀逸

物語は定職中の刑事が北海道の地方都市で起きた事件を解決する連作短編集です。あとがきによると作者が「北海道の地方都市を書き分けてみたいというのが最初にあったんです」(P362)とインタビューで答えているように、北海道の各地で事件が起き、主人公が友人などから依頼される形で事件の解決に乗り出します。地方都市の書き分けが上手く言っているかとともかく、地方の閉塞感や漁村や牧場の町の事情などが描かれています。

 

特に派手なトリックがあるわけでもなく、主人公は淡々と聞き込みをし、集めた情報から犯人やその周辺の人の心理を読み取って事件を解決する物語なので、人によっては物足りなさを感じるでしょう。少なくとも推理小説とはいえないと思います。

 

ただ、事件関係者の微妙な心理描写は秀逸で、犯人や事件関係者の愛や憎しみの描写は読み応えがあります。

 

 

兄弟の愛憎

個人的に気に入った作品は「兄の想い」と「復帰する朝」の2編です。どちらも兄弟(姉妹)が出てくるのですが、それぞれの話が全く正反対の兄弟の心の動きをテーマにしています。

 

なのに、そのどちらにもとても共感できました。また、正反対のテーマのはずが、どちらの話のラストもなんともやるせない気持ちにさせられるのも印象的でした。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

作品の最後には心身を消耗して休職した刑事が自信を取り戻す描写で終わっています。なので、読み終わった後、刑事に復活した物語が第二弾として書かれないかなって期待してしまいました。派手さはないが心の機微を描いたこの物語をもう少し読みたいなってことで、おすすめ度は星四つです。

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