おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『ダレカガナカニイル…』 井上夢人 脳内会話

   

書評的な読書感想文277

『ダレカガナカニイル…』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

井上夢人(作家別索引

レーベル 2004年2月

SF ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

テンポ良く読めて、最後のオチで驚かされました。脳内会話?もそれなりに楽しめました。ただ、流石に長いし、主要人物の心の動きに共感しにくかったりもします。井上夢人ファンでなければ、あえておすすめしないかも。

 

 

あらすじ

警備員の西岡は、新興宗教団体を過激な反対運動から護る仕事に就いた。だが着任当夜、監視カメラの目の前で道場が出火、教祖が死を遂げる。それ以来、彼の頭で他人の声がしはじめた。“ここはどこ?あなたはだれ?”と訴える声の正体は何なのか?ミステリー、SF、恋愛小説、すべてを融合した奇跡的傑作。(作品紹介より)

 

 

井上夢人さんのデビュー作

毎度おなじみ、「今好きな作家で打線を組んでみた」で岡嶋二人さん名義と一緒に二番に入っている井上夢人さんの作品です。井上さんはもともと岡嶋二人という名義で、日本では珍しいコンビの作家として活躍していました。徳山諄一さんがプロットを担当し、井上さんが執筆をするというスタイルだったそうです。

 

ただ、岡嶋作品の中期以降は徳山さんのプロットがどんどんラフのなり、岡嶋二人での最後の作品『クラインの壺』などはほとんどは井上さんの手によるものだそうです。

 

したがって今回の作品は井上夢人名義でのデビュー作ではありますが、他の人のデビュー作に見られるような粗さや読みづらさは全くなく、700ページ近い大作ですがすんなり読むことができました。

 

 

脳内会話と衝撃のラスト

物語は主人公の西岡の頭の中に別人の声が聞こえ始めるところから動き出します。脳内の声を受け入れられず、多重人格障害のような精神疾患だと考え苦しみますが、脳内の声は他人の精神が西岡の脳内に侵入してしまったと主張します。

 

この物語の見所の一つは、この西岡と脳内の声の会話です。会話を通して突然の出来事に戸惑い、苦しみ、反発する西岡の様子描かれていて、非現実的なことに苦しむ様子にリアリティーがあります。また、精神のあり方や精神エネルギーなどについての哲学的なものから宗教的なものまでさまざまな考え方が語られていてかなり興味深いです。

 

もう一つの見所が声の正体が明かされる衝撃のラストです。声の正体に関して中盤であれこれ語られるし、途中にさまざまなヒントや伏線がありますが、最後に正体が明かされたときに私はかなり驚きました。「ミステリー、SF、恋愛小説、すべてを融合した奇跡的傑作。」と作品紹介でありますが、SF的なミステリーとしては楽しめました。

 

 

登場人物に共感できず

この物語を読んで個人的に残念だったことの一つが登場人物に共感できなかったことです。脳内会話は楽しめましたが、いつまでも現実を受け入れない主人公にちょっとイライラしてしました。また、わりと自分勝手な脳内の声も共感しにくかったです。

 

もう一つ残念なことは物語の長さです。リーダビリティが高くすらすら読めますが、さすがに無駄というかもっとコンパクトに話を進めてもよいのかなって思いました。ラストシーンは驚きましたがそのためにこの長さは必要なのかって考えてしまいました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

SFとミステリーが融合した独特の読み味で井上夢人さんらしい作品です。ただ、長さや登場人物への共感しづらさなど、井上夢人ファン以外の人にはちょっとつらいかもと思ってしまいました。

 

なので、井上夢人ファン以外にはあえておすすめしないか持って事で、星三つです。

井上夢人さんの他の作品

作家別索引

SFの他の作品

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆ , ,