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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『五年の梅』 乙川優三郎 派手さはないが面白い

   

書評的な読書感想文275

『五年の梅』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

乙川優三郎(作家別索引

新潮文庫 2003年10月

時代 家族(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

面白い作家さんを見つけたかも、というのが一番の感想。他の作品も読んでみます。作品は懸命に生きる江戸時代の庶民の決断をテーマにした短編集。人生が報われる様子が、しっとりとした文章で描かれていてとても印象的です。

 

 

あらすじ

友を助けるため、主君へ諌言をした近習の村上助之丞。蟄居を命ぜられ、ただ時の過ぎる日々を生きていたが、ある日、友の妹で妻にとも思っていた弥生が、頼れる者もない不幸な境遇にあると耳にし――「五年の梅」。表題作の他、病の夫を抱えた小間物屋の内儀、結婚を二度もしくじった末に小禄の下士に嫁いだ女など、人生に追われる市井の人々の転機を鮮やかに描く。生きる力が湧く全五篇。(作品紹介より)

 

 

市井の人々を描いた山本周五郎賞受賞作

この作品を紹介するのに適切な言葉が解説に載っていたので引用します。

山本周五郎賞を受賞した作品集である。

周五郎にある講演で語ったという有名な言葉がある。

「慶長五年の何月何日に、大阪城で、どういうことがあったか、ということではなくて、そのときに、道修町の、ある商家の丁稚が、どういう悲しい思いをしたか、であって、その悲しい思いの中から、彼がどういうことを、しようとしたかということを探究するのが文学の仕事だ」(「歴史と文学」)

この言葉は、そのまま乙川優三郎の小説世界にも通じるものがあるだろう。この作家もまた一貫して、市井の人々、とりわけ社会の隅のほうにいる人々の「悲しい思い」を書き続けているのだから。(P298)

 

個人的には市井の人々を描いた時代小説というと、ここでも何度も紹介した宮部みゆきさんを思い浮かべます。ただ、宮部さんの場合は江戸の市井の人々を描きつつも、ミステリーやホラーの要素が加えられていますが、乙川さんの今回の作品はそういったエンタメ的な要素はほぼありません。

 

 

テーマは決断

この作品集のテーマの一つが「決断」なのかなと思います。暴力夫に苦労しているおかみさんの決断だったり、家庭に悩みを持っているところに幼馴染の男性から誘われた女性の決断だったりと、懸命に生きているのに報われない人々の決断が描かれています。

 

真っ当に生きてきた人には、回り道はありますが幸せな結末が、悪人にはそれなりの報いがあるけど救済もあって、読んでいてしみじみと感動できます。上にも書きましたが、エンタメ要素の少ない分、しっとりと落ち着いた物語になっています。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

基本的にはエンタメ要素の高い作品が好きな私ですが、この作品は派手さはないけど心に染み入る感動があって楽しめました。懸命に生きる人が最後に報われる結末が多いのも好印象です。

 

他の作品も読んでみたくなる面白い作家さんを見つけてしまってことで、おすすめ度は星四つです。

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