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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『八犬傳』 山田風太郎 忍者は出てこない

      2017/04/09

書評的な読書感想文274

『八犬傳 上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

山田風太郎(作家別索引

角川文庫 1989年11月

時代 ファンタジー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

八犬伝のパートは今のマンガなどに通じるエンタメ性があって楽しめました。原作の無駄な部分をバッサリ切っているのも良かったです。馬琴の私生活のパートでは変人っぷりが面白いと思っていたら、このラストはずるい。

 

 

あらすじ

町人文化に彩られた文化十年(1813)、晩秋のある午後。江戸飯田町中阪下にある小さな家屋の二階で、集い語らう二人の翁がいた――。……城は既に落城寸前、時の城主里見義実は一縷の望みを愛犬・八房に託す。“恩を仇で返す不埓者。憎き仇・安西景連の首を取れっ。さすれば我娘・伏姫を嫁にやるぞ、八房”この時まだ義実は気付いていない。この一言が昔の怨念を呼び起し、里見家の未来永劫に関わる重大な一言であったことを……。日本伝奇小説の最高傑作“南総里見八犬伝”と、それを綴った曲亭馬琴の知られざる執筆生活を、著者独自の構成で描き出す世紀の名作。(作品紹介より)

 

 

もとネタは曲亭馬琴(滝沢馬琴)の『南総里見八犬伝』

以前紹介した『甲賀忍法帖』の作者で「今好きに作家で打線を組んでみた」で八番打者の山田風太郎さんの作品。山田風太郎さんといえば奇抜な忍法を使う忍者が出てくる物語で有名ですが、今作は忍者は出てきません。

 

今回の作品は曲亭(滝沢)馬琴の『南総里見八犬伝』が元ネタになっています。『南総里見八犬伝』とは1800年代に28年をかけて書かれた長編伝奇物語です。その内容は、とある呪いのために生まれた八人の若者・八犬士が、それぞれが持つ数珠の玉と体のあざを目印にして集結し、宿敵を倒す物語です。

 

後世のエンターテイメント作品に数多くの影響をあたえ、例えば漫画『ドラゴンボール』の七つの玉を集めるアイディアは、『南総里見八犬伝』の八つ数珠の玉を持つ若者が集結するところから着想を得たそうです。

 

また、今回の作品『八犬傳』の中で作者の山田風太郎さんは

天守閣の決闘とか、刑場破りとか――後世の大衆小説や映画にしばしば使われた手だが――最初にこういう場面をえがいたのは馬琴なのである。(上巻P317)

と述べています。

 

 

虚の世界

今回の物語『八犬傳』は二つの世界観から成ります。その一つが「虚の世界」。これはずばり『南総里見八犬伝』のダイジェストです。なぜ翻訳ではなくダイジェストなのかというと、物語の分量が膨大で、なおかつその内容が、馬琴の異常な几帳面さを反映した細かい講釈や道徳的説教が多すぎるためです。

 

ただ、山田風太郎の手によってバッサリと無駄を省いたその物語は、八人の犬士たちが、苦しめられながらも最後には敵を倒すエンタメ性にあふれる物語で、手に汗握りながら楽しく読めました。

 

運命の仲間を集める旅、宿命の敵、一度集まった仲間がまた別れ別れになってしまう展開などなど、現代の漫画や映画に通じるエピソードがたくさんあって全く古さを感じさせない物語です。

 

 

実の世界

物語のもう一つの世界観・実の世界は、作者の曲亭(滝沢)馬琴の私生活や執筆の様子を描いた現実の世界です。馬琴の異常な記録癖や晩年の不遇ぶりなどが描かれていて、興味深く読めました。

 

ただ、馬琴の変人ぶりを楽しんでのんきに読んでいると、終盤での展開に驚かさせ、感度させられました。晩年の不遇の中でも『南総里見八犬伝』の完成に執念を燃やし、失明をしてさえ周りの人を巻き込んで執筆活動を続けたその姿は、ちょっと神々しくもありました。

 

このラストはずるい。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

山田風太郎流に凝縮した『南総里見八犬伝』だけでも十分に面白いのですが、そこに馬琴の私生活をからめ、最後は馬琴を主人公とした物語として締めくくったラストは秀逸です。膨大な本編を読むより絶対に楽しめるってことで星四つです。

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