おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『離婚』 色川武大 別名阿佐田哲也

   

書評的な読書感想文269

『離婚』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

色川武大(作家別索引

文春文庫 1983年5月(このブログの画像等は新装版のものです。)

家族 純文学(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

共感しがたいストーリーなのに、登場人物の心情には共感できるのが面白いところ。また、作風も題材も違うのに根底には阿佐田哲也に通ずるところがあるのが見所か。ただ、連作の後半はだれてしまっているのが残念。

 

 

あらすじ

「ことさら深刻ぶるのはよそうぜ」などとカッコいいせりふを吐いてぼくたち二人はおたがい納得して「離婚」したのです。ところがどこでどうなったのでしょうか、ぼくはいつのまにか、もと女房のアパートに住みついてしまって……。男と女のふしぎな愛と倦怠の形を、味わい深い独特の筆致で描き出す直木賞受賞作品。(作品紹介より)

 

 

別名・阿佐田哲也の直木賞受賞作

『麻雀放浪記』などの麻雀娯楽小説で一世を風靡し、1970年代の麻雀ブームの立役者である阿佐田哲也さん。週刊少年マガジンで連載された人気漫画、『哲也~雀聖と呼ばれた男~』のモデルなった人物です。その阿佐田哲也さんの本名が色川武大さんで、娯楽作品ではなく今作のような純文学を書く時には色川武大名義で出版した、二面性のある作家さんです。

 

ちなみに『麻雀放浪記』は、私も大好きな作品で、戦後のドヤ街を舞台に主人公の坊や哲が個性的な登場人物たちと麻雀で激闘を繰り広げるピカレスク小説です。麻雀シーンがとんでもなく手に汗握る展開で、多少なりとも麻雀がわかる人なら読んで損はない作品です。

 

今作はそんな色川さんの直木賞受賞作品で、表題作の短編「離婚」とその続編の短編が二編と作者本人らしき人物と若い女性たちの奇妙な共同生活を描いた「少女たち」の四編からなります。

 

 

共感しがたいのに共感できる

表題作「離婚」はわがままで自分勝手な妻と離婚した主人公が、結局その別れた妻と同棲することになる物語。

ぼくたちはいったいどういう関係なのか。お互いは慣れがたいが、ただ責任を取ったり拘束されたりすることが嫌なので、お互いの勝手ないいぶんを活かすためには、離婚して同棲するとうのがきわめて自然な道筋ではありますまいか。(P50)

と結論付ける物語で、ちょっとどころか、かなり共感しにくいストーリーになっています。

 

一方で主人公をはじめ登場人物のわがままだけど人間的な心情には共感できる部分も多々あるのが不思議です。

目茶苦茶といえばそのとおりですが、一緒に暮らすには障害になった彼女のマイナス要素が、もう少し責任のない立場になってみると、そっくりそのまま、風変わりな可愛い女の子、という要素に早変わりするのです。(P63)

この文章なんてすごく共感できるし、結婚と恋愛の違いを端的についているのかなって思います。

 

「離婚」の後に二編の短編が続編として収録されています。ベティという女性が出てきて、主人公と元妻と奇妙な三角関係を形成して、物語としてはこちらのほうが盛り上がってるといえるかもしれません。ただ、個人的には後半だれてしまっている気がするのと、主人公と元妻の二人だけの緊張感のある関係を描いた「離婚」が一番面白かったです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

阿佐田哲也さんの麻雀小説とは似ても似つかない今回の作品ですが、物語の根底にあるシャイでぶっきらぼうだけど人間愛のある登場人物はちょっと阿佐田哲也さんの小説ともつながるのかなって思います。何度もいいますが、阿佐田哲也さんとは別物で娯楽性もかなり低いのですが、その根底に共通点を見つけるのも楽しいかもって事で、おすすめ度は星三つです。

作家別索引

家族の他の作品

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆ , ,