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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『白ゆき姫殺人事件』 湊かなえ イヤだけど癖になる

   

書評的な読書感想文267

『白ゆき姫殺人事件』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

湊かなえ(作家別索引

集英社文庫 2014年2月

サスペンス ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

後味が悪い。さすが、イヤミスの女王。作中で匿名の怖さやマスコミの暴走が描かれてますが、一番気持ち悪いのは自分の中にもありそうな悪意や無自覚な悪意を見せられることです。ただ、たぶん懲りずに他の作品も読みます。

 

 

あらすじ

化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。人々への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。傑作長編ミステリー。(作品紹介より)

 

 

映画化されたイヤミスの女王の作品

以前紹介した『告白』の湊かなえさんの作品。湊さんといえばイヤミスの女王として有名な作家さんです。イヤミスとは、読んでいやな気持ちになるミステリーのことで、『告白』なんかはずばりその物だと思いますが、個人的にはラストに驚きがあること、嫌な気持ちにはなるけど癖になって別の作品も読みたくなる、というのもイヤミスの条件かなって思います。じゃないと単に後味が悪だけの小説が全部イヤミスになってしまうので。

 

もちろん今回の作品もしっかりイヤミスしています。美人OL殺人事件の過熱する週刊誌の報道やネットの中の匿名の悪意を描いた作品ですが、はっきり言って誰も救われないし、登場人物はほぼほぼ嫌なやつです。ただ、嫌な気持ちになりながらも、湊さんの別の作品を読んでみようかなと思えるのはさすがです。

 

 

自分の嫌な部分を映す鏡

今回の作品は匿名なのをいいことに噂レベルの殺人事件の容疑者を無責任に糾弾、さらし者にするネット社会の怖さと、その噂を記事にしてしまうマスコミの暴走がメインテーマです。また、本文とは別に週刊誌の記事やSNSに投稿された内容を関連資料として載せている巻末に載せてあるのもちょっと面白いです。

 

ただ、個人的にこの物語の一番の肝だと思うことは、自分の中にもありそうな悪意や善意のふりをした悪意が描かれていることです。物語は週刊誌の記者が関係者にインタビューをするシーンで多くを占められているのですが、インタビューされる人たちは事件の衝撃や週刊誌にインタビューされること舞い上がるのか、大した証拠も無く、ちょっとした心証で容疑者を貶めます。また、容疑者の味方を自称する人たちも、(私にはさすがにちょっとアホに見えましたが)容疑者をかばうそぶりをしながら、貶めてしまっています。

 

あとがきで映画版の監督の中村義洋さんが

うーん、そこを書くか……。そうか、そこをそう書くか。そう何度も唸った。唸ったところはすべて人の気持ちのありようについて書かれたところだった。何かあったら俺もこうなるよな、こういう気持ちになっちゃうよなという部分にすべて納得がいく。(P306)

と書いていましたが、私の気持ちそのままで驚きました。なんだか自分の嫌なところを映す鏡を見ている気分になりました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

嫌な気持ちになるけ癖になる、しっかりイヤミスしているこの作品。巻末に資料を付ける構成は面白いし、真相にも驚かされましたが、『告白』のインパクトは超えられなかったのかなってことで、おすすめ度は星三つです。

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