おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『悼む人』 天童荒太 テーマは「死」

   

書評的な読書感想文263

『悼む人 上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

天童荒太(作家別索引

文春文庫 2011年5月

人間ドラマ 家族(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

テーマは「死」。それも自分以外の。テーマ性が強く物語として楽しめるかと言われると微妙ですが、主人公の行動に良くも悪くも影響を受けた人たちを描く前半が印象的です。親しい人の死をどう受け止めるか考えさせられます。

 

 

あらすじ

不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と僧しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。(上巻・作品紹介より)

 

 

 

「死」テーマにした直木賞受賞作

『永遠の仔』『家族狩り』 などの代表作を持つ天童荒太さんの直木賞受賞作。今回の作品のテーマはずばり「死」です。それも、自分以外の人の死をどう受け止めるかです。主人公の静人は全国を巡り、新聞や雑誌で調べた不慮の死を遂げた人を悼む旅をしています。不慮の死があった現場たずね、その付近の人たちに

「(管理人注;亡くなった人は)誰に愛されていたでしょうか。誰を愛していたでしょうか。どんなことをして、人に感謝されたことがあったでしょうか。」(P13,14)

とたずねてまわり、その人のことを忘れないために心に刻むように悼みます。

 

なかなか人に理解されず、静人、本人すらよく分からないので病気だと思って欲しいという謎の行動ですが、さまざまな影響を人々に与えます。捨て鉢に人生を生きる雑誌記者、末期のがんに侵された静人の母、夫を殺し、その霊に取り付かれている女。今回の作品は静人とその影響を受けた三人の人物の物語になっています。

 

 

波紋のように広がる影響

「そうなんだ……小さな地域においてさえ、ぼくはすべての人の死を知ることはできない。でも、ここで人が亡くなった、あそこでも亡くなったと知れば、じっとしていられないんだ。亡くなった一人一人がこの世界に生きていたということを、できるだけ覚えていられないかと思ってる。覚えて、何になるかなんて、いまはわからないよ。それを知るためにも、つづけたいんだ。」(P250,251)

こういう気持ちで続けられる「悼み」は周りの人に影響を与えます。

二ヶ月ほど前、十一歳の兄があやまって動かした車にひかれた六歳の子に、彼は心から同情した。だが今回の被害者には、死んでも仕方がなかったかのような発言をする。自分へのセクハラ発言には敏感だった野平も、少女が誰とでも寝るヤク中と知り、自業自得的なところがあると口にした。(P208,209)

このような「死」を区別する考え方にも静人は影響を与えます。本人はまったく意図することなく人々は考え方を変化させられます。そして、読んでいる私も「死」について考えさせられ、影響を受けることになります。といっても、主人公の考え方にすべて同調するわけではありませんが。

 

ただ、身近な人の死をどう考え、どう受け止めるべきか、少しわかった気がしました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

テーマ性が強いので、物語として楽しめるかというとかなり微妙です。ただ、静人の行動に反発したり、戸惑ったりしながらも影響を受ける人々を描いた前半は特に読み応えがあり、予想外に意欲的に読むことができました。。後半はちょっと展開が都合よすぎたり、周りの人たちが静人に同調しすぎるので前半よりも落ちると思いますが。

 

精神的に余裕があるタイミングでじっくり読んでもらいたい作品ではありますが、やはりテーマ性が強すぎるのでおすすめ度は控えめの星三つです。

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