おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『明日の記憶』 荻原浩 渡辺謙がほれこんだ

   

書評的な読書感想文257

『明日の記憶』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

荻原浩(作家別索引

光文社文庫 2007年11月

人間ドラマ 家族(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

決して明るい話ではありませんが、読んで良かったと思える作品。特にラストが秀逸です。また、アルツハイマーにより記憶が少しずつ蝕まれる様子や周りの人間の戸惑いがリアルに描かれていて、緊迫感がありました。

 

 

あらすじ

広告代理店営業部長の佐伯は、齢(よわい)五十にして若年性アルツハイマーと診断された。仕事では重要な案件を抱え、一人娘は結婚を間近に控えていた。銀婚式をすませた妻との穏やかな思い出さえも、病は残酷に奪い去っていく。けれども彼を取り巻くいくつもの深い愛は、失われゆく記憶を、はるか明日に甦らせるだろう! 山本周五郎賞受賞の感動長編、待望の文庫化。(作品紹介より)

 

 

渡辺謙がほれこんだ山本周五郎賞受賞作

あの映画俳優・渡辺謙さんがこの作品を読んで感動し、映画化を熱望する手紙を作者に書いたそうです。ご自身の白血病での闘病生活がオーバーラップしたそうです。のちに渡辺謙さん主演で映画化され、渡辺さんはこの作品でアカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞されています。

 

物語は若年性アルツハイマー病にかかった主人公が病気に恐怖し、苦しみながらも何とか病を受け入れていこうとする物語です。取り上げているテーマがテーマなので決して明るい話ではありません。結末も希望にあふれたとはなりません。ただ、読後に自分の人生を大切に生きようと思える、読んでよかったと思える作品です。

 

 

病気の恐怖と周囲の戸惑い

主人公の佐伯は50歳の男性です。物忘れが多くなってくる歳ではありますが、まだまだ現役バリバリで仕事をしています。そんな彼が徐々に若年性アルツハイマーに蝕まれます。その様子がリアルで、本人が感じている恐怖が丁寧に描かれていて、読んでいてのどが渇いて仕方ありませんでした。

そのひとつは、アルツハイマーが、死に至る病気だということだ。言葉や思考に続いて体の機能も奪われていく。体が生きることを忘れていくのだ。(P98)

 

「ありがとうございます。課長」

心からそう言った。本当はきちんと名前を呼んで礼を言いたかったのだが、残念ながら、私はどうしても彼の名前を思い出すことができなかった。(P290)

アルツハイマーの実態から、かかった人がどのような症状が出るのか、主人公の体験を通して描かれています。

 

また、家族や会社の同僚、友人たちの病気に対する反応もリアルです。絶望や戸惑いはもちろん、疎んじられたり、病気を利用してだまされたりと、さまざまな反応があって驚かされます。自分がこの病気にかかったら、自分の周りの人間(親しい人もそうでない人も)がこの病気にかかったらどうするか、考えさせられます。

 

 

ラストが秀逸

主人公がアルツハイマー病にかかってしまうので、物語の展開は当然予想できてしまいます。それでもこのラストは秀逸だと思います。どんなラストかは読んで確かめて欲しいのですが、もちろん物語のテーマ上希望にあるれたラストではありませんが、それでも読んだ人が何かしらをつかむことのできるラストなのかなって思います。

 

私は、毎日を大切に生きようという気持ちをつかみました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

心が震える作品で、読んでよかったと素直に思えます。この病気は人事じゃないってことでおすすめ度は星四つです。

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