おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『掟上今日子の備忘録』 西尾維新 盲点をついた謎

   

書評的な読書感想文251

『掟上今日子の備忘録』(単行本〈ソフトカバー〉)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

西尾維新(作家別索引

講談社 2014年10月

ラノベ ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

盲点をついた謎と軽快な文章が楽しい作品。ただ、一回寝たら記憶がリセットされるという設定が、キャラクターミステリーとしての売りとしては弱い上にイマイチその設定を生かし切れていないのが残念です。

 

 

あらすじ

掟上今日子(おきてがみきょうこ)――またの名を、忘却探偵。すべてを一日で忘れてしまう彼女は、事件を(ほぼ)即日解決!あらゆる事件に巻き込まれ、常に犯人として疑われてしまう不遇の青年・隠館厄介(かくしだてやくすけ)は今日も叫ぶ。「探偵を呼ばせてください――!!」スピーディーな展開と、忘却の儚さ。果たして今日子さんは、事件の概要を忘れてしまう前に解決することができるのか?(講談社ホームページより)

 

 

新垣結衣さんでドラマ化の「忘却探偵シリーズ」第一弾

以前紹介した『化物語』の西尾維新さんの作品で、新垣結衣さん主演でドラマかもした忘却探偵シリーズの第一弾です。物語の語り手である隠館厄介は、何もしてなくても難事件や凶悪犯罪に巻き込まれ、その上犯人勝手にみなされる不幸な体質の持ち主。そんな彼が頼りにしているのが、忘却探偵・掟上今日子です。

彼女の記憶は一日ごとにリセットされる。

医学用語で言えば前向性健忘の一種となるだろうが、ともかく、どんな調査をしても、どんな聴取をしても、彼女はそれを寝て起きたら忘却してしまうのだ。(P21)

こんな特徴を持つ彼女は、持ち前の推理力と、どんな機密も一晩寝れば必ず忘れるので秘密が守られるため、探偵として人気を博しています。

 

今回は隠館厄介が巻き込まれる奇妙な事件を、掟上今日子が解決する物語にっています。今作では四つの謎が描かれています。

 

 

盲点をついた謎と軽快な文章

物語の魅力の一つはそのトリッキーな謎といえます。例えば、

「お前の百万円は預かった。返して欲しければ一億円用意しろ。」(P74)

こんな電話で始まる事件。しかも盗まれた本人が一億を払おうとします。なぜ、百万円の身代金が一億円なのか。こういった、人の盲点を突いているけど種明かしを読めば納得の謎が、この物語の魅力のひとつです。

 

もう一つこの物語の魅力を挙げるとすればそれは、軽快な文章です。同じ作者の『化物語』ではテンポの良い会話とそこにちりばめられたパロディが魅力でしたが、今作ではそれほど会話は多くないのです。ただ、地の文であっても軽快で読みやすい文章なのが魅力的です。

 

 

「キャラクターミステリー」としては弱い

萌え志向のライトノベルではない。軽めのミステリー。設定は現代。このような特徴を持った物語を「キャラクターミステリー」というジャンルに分類することがあるそうです。このブログで紹介した中では『ビブリア古書堂の事件手帖』、『珈琲店タレーランの事件簿』、『京都寺町三条のホームズ』などが該当します。

 

今作もこの「キャラクターミステリー」に分類できると思うのですが、探偵が一回寝るとすべてを忘れてしまうという設定だけだと作品の特徴というか、売りとしては弱いのかなと思ってしまいました。『ビブリア』の古書と鎌倉や『タレーラン』の珈琲と京都、『ホームズ』の骨董と京都のように、物語のベースとなるテーマや舞台がないとストーリーに芯ができないし、飽きるのも早くなってしまいます。

 

また、一回寝てしまうとすべてを忘れてしまうという設定は物語にスリルを与えてはくれますが、案外あっさりと抜け道ができたりしてイマイチ設定を生かしきれていない印象を受けました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

期待が高かった分ちょっと辛口の感想になりましたが、軽快な文章はとても読みやすく、なにより人の盲点をついた謎は素直に楽しめましたので、おすすめ度は星三つです。

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