おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『何者』 朝井リョウ 忘れられない本になるかも

   

書評的な読書感想文248

『何者』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆(星数別索引&説明

朝井リョウ(作家別索引

新潮文庫 2015年7月

青春 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

「泣けた」のは感動ではなく、心をえぐられたから。今どきの大学生の就活を上手く描いているなと、のんきに読んでいたけど、それだけではない作品。これほど衝撃を受けた作品は滅多にないと言うことでおすすめです

 

 

あらすじ

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

直木賞史上初の平成生まれの受賞者

今回の作品は直木賞史上初の平成生まれの受賞者である朝井リョウさんの直木賞受賞作品です。佐藤健さん主演で映画かもされました。

 

物語は就職活動中のタイプの違う5人の大学生が就活対策で協力しつつも、徐々に本音や自意識が見えてきて関係性が変化するというお話。以前紹介した『桐島、部活やめるってよ』が今どきの高校生の実態を描いた小説なら、こちらは今どきの大学生の就職活動を描いた物語になっています。ツイッターらしきSNSが物語のキーアイテムになっているのも今時です。

 

 

今どきの就職活動

就職活動が物語の大きなテーマになっていて、今どきの就職活動の様子が丁寧に描かれています。例えば

自宅でできるWEBテストはひとりでやるものではない。そんなことは、就活生の中では常識になっている。中には、「これは学力をはかるものではなく、協力してくれる友人がいるかどうか調べるテストだ」と言う人もいるくらいだ。(P107)

なんて文章は実際に就職活動を経験した作者ならではの文章なのかなと思います。

 

私も大学生のときに経験したのですが、手探りの状態で面接の準備や対策をし、それでも容赦なく不合格になるといった、就職活動の不安感や理不尽さが上手く表現されていてすごく共感できました。

 

以前紹介した『桐島、部活やめるってよ』ではスクールカーストのちょっと窮屈な雰囲気が上手く表現されていますし、朝井さんは若者社会の空気を表現するのが上手なのかなと思います。

 

ただ、有名企業であっても書類審査には基本的に通過している主人公たちは、おそらく一流大学に在籍しているようですが、書類審査ですら苦労してしまう学生の視点がないのがちょっと気になりました。『桐島』でもカーストの上位の人の視点が多かったのですが、どちらも全体の上半分だけを切り取っているように見えてしまいました。

 

 

「泣けた」というか「泣かされた」

就職活動を上手く描いた作品。さて、主人公たちは苦しい就活で精神的に丸裸にされた後、どんな風に成長するんだろうかとちょっとのんきに読んでいましたが、後半でそんな気持ちは吹き飛ばされました。それどころか、ちょっぴり泣いてしまいました。

 

泣けたといっても感動したわけではなく、ある人物のセリフが心に突き刺さり、まるで責められているかの気持ちになってしまい泣かされたというのが正解です。丸裸にされたには主人公たちだけではなく実は私も一緒で、そこに登場人物のセリフが槍のように突き刺さり、心がえぐられました。

 

たぶん一生忘れなれない本になると思います。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

桐島、部活やめるってよ』を紹介したときの感想で、「高校生の心の揺らぎを描いているだけ」と書きましたが、この作品も前半だけを見れば、就活を通して大学生の心の揺らぎを描いているだけと言えたかもしれません。ただ、今回はそこで終わらず読者の心を揺さぶる物語になっています。

 

こんなに心が揺さぶられる作品は滅多になく、おそらく一生は忘れられない本のひとつになるってことで、おすすめ度は最高評価の星五つです。

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