おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『覘き小平次』 京極夏彦 むき出しの人間性

   

書評的な読書感想文247

『覘き小平次』(文庫)

おすすめ度☆☆(星数別索引&説明

京極夏彦(作家別索引

角川文庫 2008年6月

時代 ホラー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

前半は読みづらい文章に苦戦し、眠くて眠くてしかたありませんでした。ただ、後半になると癖のある文章にも慣れ、むき出しになった人間性のぶつかり合いを怖がりながらも楽しめました。ただ、おすすめかというと微妙。

 

 

あらすじ

押入で死んだように生きる木幡小平次は、天下随一の幽霊役者。ある時、旅巡業の声がかかるが、それは凝り続けた愛と憎しみが解き放たれる修羅の幕開けであった。女房・お塚を始め、小平次の周りに蠢く生者らの欲望、悲嘆、執着が十重二十重に渦巻き絡み合い炸裂し――やがて一つの異形の愛が浮かび上がる。人間という哀しい華が圧倒的に咲き乱れる、これぞ文芸の極み。古典怪談に材を取った『嗤う伊右衛門』に続くシリーズ第二弾。(作品紹介より)

 

 

山本周五郎賞受賞の時代物ホラー

今回の作品は、山本周五郎賞を受賞した時代物のホラーです。江戸時代の怪談を基にした作品で、山東京伝の『復讐奇談安積沼』を下敷きにしています。余談ですが、本書の関連文献の中に並木五瓶の『怪談木幡小平次』とありますが、この人は先日紹介した『一の富 並木拍子郎種取帳』に拍子郎の師匠として出てきます。

 

 

正直、読みづらい

今回の作品の特徴は、といわれると、答えは独特の文章と言えます。例えば冒頭は下の文章です(カッコ内の文字は本文に書いてあるルビです)

小平次(こへいじ)は、何時(いつ)も然(そ)うしている。

頸(くび)を胴躰(からだ)に深く埋もれさせ、脊椎(せぼね)も折れよう程に彎曲(まげ)て、貧弱な顎(あご)を突き出し、腰を浮かせて固まっている。左手では自然薯(じねんじょ)の如きふたつの膝頭(ひざがしら)を抱え、右手では爪先立(つまさきだ)った右足の踵(かかと)を摩(さす)っている。踵は荒れていて、皹割(ひびわ)れた皮が厚く盛られているので、触れても感覚がない。指先は乾いた鏡餅の如きそれを感じているのに、踵の方は何の反応もない。己(おのれ)が自身(おのれ)にふれているのに、一向そうした感触がない。(P5)

漢字の使い方が独特で数も多く、とにかく読みづらい文章です。新しい小説を読み始めると最初は文章に慣れなくて物語に入り込めないものですが、普通は数ページから多くても数十ページも読めば慣れてきます。しかし、この作品では100ページ以上読んでも文章に慣れることがなく、とにかく眠くて、眠くて。

 

ただ、この独特の文章が醸し出す迫力というか不気味さは物語の世界観にあっていて、読者に恐怖心を与えるのに一役買っています。

 

 

むき出しの人間性

物語の主人公・小平次は普段は押入れにこもってぼんやりと生きていますが、幽霊役をやらせると天下一品という人物です。この小平次がある芝居の旅巡業に参加するところから物語が動き出します。

 

物語のなかの小平次にかかわった人物たちは、小平次の空虚な瞳に吸い取られるごとく、外面を剥ぎ取られ人間の欲望にまみれた本性をむき出しにします。人によっては本人も気付いていない、むき出しの本性のさらに内面までさらけ出すことになります。この本性をむき出しにした人間のぶつかり合いは、当然修羅場になり、陳腐な言い回しですが人間が一番怖いってことを読者に教えてくれます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

上に書いた独特の文章で400ページ以上の長編を読むのはなかなか大変なのですが、この文章に慣れた先には、むき出しにされた人間の本性のぶつかり合いが描かれて、怖いけど楽しく読むことができます。ただ、やっぱりこの文章の読みづらさは厳しいので、おすすめ度は星二つです。

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