おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』 高殿円 大河ドラマの原作ではない

      2017/01/30

書評的な読書感想文246

『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

高殿円(作家別索引

文春文庫 2015年5月

時代 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

ファンタジー要素はともかく、時代に翻弄されながらも家を守るために生きる直虎に素直に感銘を受けました。また、当時の豪族の不安定さや戦国の女性ならではの生き方が描かれていて、興味深く読めました。ラストがしびれます。

 

 

あらすじ

「紅はいらぬ、剣を持て」井伊家二十二代目当主直盛の娘・直虎は、言うが早いか、強引に結婚を迫る相手の腰から刀を抜き取り己の髪を切り落とした――。のちの徳川四天王、「井伊の赤備え」で武勲を誇った井伊直政の養母にして、遠州錯乱の時代に一命を賭して井伊家を守り抜いた傑女の、比類なき激動の人生。(作品紹介より)

 

 

女領主・井伊直虎

今回の作品は2017年の大河ドラマで取り上げられた戦国時代の女領主・井伊直虎の物語です。今回の大河ドラマは原作のないオリジナル脚本なのでこの作品と大河は直接関係はありませんが、見比べてみるのも楽しいと思います。

 

主人公の井伊直虎は徳川四天王の一人・井伊直政の養母で滅亡寸前の井伊家の当主を勤めたといわれる実在の人物です。実在の人物といいつつはっきりしないことの多い人物で、女性ではなかったのではとも言われていています。

 

 

直虎の生き様

香(直虎の子供の頃の名前)が生まれた井伊家は戦国武将・今川義元の支配下で井伊谷一帯を領地とした豪族でした。当時の領主・井伊直盛には娘の香しか子供がいなっかたので、香が婿養子としていとこの直親を向かえる予定でした。

 

ところが直親の父親が今川家に謀反の疑いありとして自害させられることから運命の歯車が狂い始めます。桶狭間の戦いなどの戦や今川家の監視役の讒言などにより次々と一族の男性が死亡します。そこで、香は井伊家の血を絶やさないために、当時幼かったのちの井伊直政を養子にし、自身が井伊家の当主となります。

 

一族の男性が死亡するのをただ見るしかない無力さや女ながらに領主になる覚悟などが丁寧に描かれているので、読んでいて素直に感銘を受けました。一族の長になるのは男性でも覚悟のいることなのに、当時ではかなり珍しい女領主になるのには相当の覚悟が要ることは読んでいて良く分かるので、香が領主になると決断した場面では鳥肌が立ちました。

 

 

戦国の領主の不安定さと女性の行き方

直虎が生まれた井伊家は藤原氏の末裔として遠江国の井伊谷地方を500年あまりも支配してきた豪族で、戦国時代に今川家の支配下に置かれることになりました。ただ、今川家との関係は微妙で、お互い100%信頼しあっているわけではなく、物語のなかでも今川家は監視役の人間を井伊家に送り、井伊家側も徳川家や武田家に鞍替えするそぶりを見せたりしています。

 

こうした、力で支配し、裏切り裏切られる不安定な関係は、江戸時代の忠義でつながった大名と家臣の関係とは全く別物で、新鮮で興味深く読むことができました。

 

一方で、裏切り裏切られる時代のなかでも婚姻関係は重要で、物語のなかでも色々な家に嫁いだ姉妹のネットワークが一族を支える様子が描写されていたりと、戦国時代の女性の行き方が描かれています。作中で

「輿入れはおなごのいくさ。紅はおなごの剣。無為に生きる暇などどこにもない。」(P373)

といったセリフがありますが、女性の生き方を簡潔に述べていてとても印象に残りました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

正直、主人公の直虎が未来を見通せる力を持っているといった、ファンタジー要素は必要ないのかなと思います。ただ、直虎の生き様には素直に感銘を受けましたし、

――生涯、ただ一度の紅であったと伝えられる。(P7)

という冒頭の文章にリンクしたラストはにはかなりしびれたってことで、おすすめ度は星四つです。

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