おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『一の富』 松井今朝子 並木拍子郎種取帳シリーズ

   

書評的な読書感想文245

『一の富 並木拍子郎種取帳』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

松井今朝子(作家別索引

ハルキ文庫 2004年6月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

江戸の風俗に詳しいと定評の作者だけに、捕物帳の事件に江戸の風俗が取り入れられていて面白いし、ためになります。また、登場人物たちのキャラも良く、今後の関係も気になるところなので、シリーズを追いかけます。

 

 

あらすじ

「ちと、面白いことがござりました」――人気狂言作者・並木五瓶の弟子・拍子郎は、“町のうわさ”を集め、師匠のうちに報告にくるのが日課だ。大店の不義密通事件、出合茶屋の幽霊騒動、金貸し老婆の首括り事件……拍子郎は、遭遇する事件の真相を、五瓶とその妻の小でん、料理茶屋のおあさ、拍子郎の兄で北町奉行所に勤めている惣一郎などを巻き込んで、次々と明らかにしていく――。江戸の四季と人の心の機微が織りなす、粋でいなせな捕物帳の傑作シリーズ第一弾。(作品紹介より)

 

 

「並木拍子郎種取帳」シリーズ第一弾

私にとって2016年最大のヒットだった『吉原手引草』の作者・松井今朝子さんの作品。なので今回は松井さんのほかの作品は、どんなんだろうと期待に胸を膨らましつつ読みました。

 

主人公の拍子郎は人気狂言作家(芝居の台本作家)の師匠のために、芝居の種になりそうな町のうわさを集めるのが日課になっています。不思議なうわさの真相を拍子郎持ち前の好奇心で探っていくと、意外な事件が待ち受けているという今回の物語。まあ、狂言作家の卵が主人公という、ちょっと変則的な捕物帳の連作短編集といったところです。

 

 

江戸時代の風俗が面白い

作者の松井さんは、大学で歌舞伎について学び、卒業後は松竹に入社にして歌舞伎の企画制作に携わります。その後、松竹を退社し、フリーで歌舞伎の脚色・演出・評論などを手がけた経歴の持ち主です。作家になる前に歌舞伎の入門書を上梓されていて、歌舞伎と江戸の風俗に対する造詣の深さには定評があります。

 

その証拠に、直木賞を受賞したときの選評で阿刀田高さんに「歌舞伎と江戸風俗に関して松井今朝子さんの造詣の深さは私が云々するレベルをはるかに超えている」なんていわれています。

 

そんな作者の作品なので、作品のアチコチに江戸の風俗や歌舞伎をはじめとしたお芝居の知識が取り入られています。出合茶屋という、今で言うところのラブホテル的な店で幽霊騒ぎの話では、出合茶屋のシステムや間取りなどが詳しく書かれていて、なかなか興味深く読めました。

 

他には、芝居の劇場で外からなかにいる人に連絡を取りたいときに使う「急用札」を使った事件の話などがあって、時代物好きの私としては、こういった江戸時代のちょっとした風俗を紹介してくれるだけでも読む価値があるのかなと思います。もちろん、事件のトリックと江戸時代の風俗が上手くリンクしているのは言うまでもありません。

 

 

愛すべきキャラクター

この物語の主要キャラクターは三人います。師匠に半ばあきれられるほど好奇心が強い主人公の拍子郎。拍子郎の師匠で、実在の人物である狂言作家の並木五瓶。五瓶が拍子郎の話を聞いて何とはなしに推理することが事件の解決のカギになったりします。

 

そして個人的には一番のお気に入りのキャラクターであるヒロインのおあさ。おあさは、料理茶屋の一人娘にもかかわらず、真っ黒に日焼けして男の子だか女の子だかわからない容貌の18歳の娘です。自分で市場に行って仕入れを行い、料理の腕前はなかなかですが、口が悪くてバラガキ娘なんて呼ばれています。ようは男勝りのはねっかえり娘です。

 

この三人が三人ともいやみのない愛すべきキャラクターなので、読んでいて気持ちが良いです。ちなみに、おあさと拍子郎はひょんなことから距離が縮まり、お互いを意識しだします。ただ、お互い奥手なのと立場の違いなどでなかなか進展は望めそうもないのですが、次回以降どうなるかちょっと気になります。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

トリビア的なものが好きなので江戸時代の風俗に詳しいこのシリーズは、次回作も読みたいと思います。レギュラーキャラクターたちにいやみがないのも良い感じです。ただ、各短編のキャラにしろ、レギュラーキャラにしろ、もう少し掘り下げてもいいのかなってことで、今回は控えめの星三つです。

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