おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『古本屋探偵の事件簿』 紀田順一郎 強烈な古書マニア

      2017/08/20

書評的な読書感想文239

『古本屋探偵の事件簿』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

紀田順一郎(作家別索引

創元推理文庫 1991年7月

サスペンス ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

本の探偵というより、古本マニアが起こす事件のお話。サスペンスの色合いが濃く、マニアたちの異常な執念がかなり強烈です。また、戦後の印刷業界の闇や発禁本の出版事情などの裏歴史の話が興味深いです。

 

 

あらすじ

神田神保町にある古書店「書肆・蔵書一代」主人須藤康平が出した「本の探偵――何でも見つけます」という広告につられ、次々とやってくる奇妙な依頼人。誰も見たことがない、という幻の稀覯書『ワットオの薄暮』の紛失事件を扱った「殺意の収集」をはじめ、「書鬼」「無用の人」の三中編に、長編「夜の蔵書家」を収めた。鬼気迫る愛書家の執念が、読む者を慄然とさせる傑作揃い。(作品紹介より)

 

 

「ビブリア」シリーズに影響を与えた作者

以前紹介した、『古書収集十番勝負』の紀田順一郎さんの作品。『古書収集十番勝負』のあおりに『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズを書くに当たって影響を受けたなんて書いてあったので、おそらくこの作品からも影響を受けていることでしょう。

 

ただ、当たり前ですが「ヒブリア」シリーズとは似て非なるものかなと思います。作中で主人公の須藤が自分の古本屋の宣伝文句として「本の探偵――何でも見つけます」なんて言っていますが、実際は古書マニアが起こした事件を解決する物語で、「ビブリア」シリーズのように古書の内容にまで言及することはあまりありませんでした。「ビブリア」シリーズを読み終わると作中に出てきた本を読みたくなりますが、この作品ではそういうことはありませんでした。だからといって、面白くないかというと、これはこれで良さがあるのですが。

 

 

強烈な古書マニアたち

古書マニアたちが引き起こす事件が物語の本筋になっているので、ある意味、主役ともいえる古書マニアたちはかなり個性的なキャラクターです。

「本探しの極意は熱意ではない、殺意だと思います」(P21)

なんて言い切る古書マニア。インターテーネットがない時代、何より重要だった古本屋の目録を誰よりも早く手に入れるために、速達用の切手を本屋に渡し、送付先も自宅と会社の二カ所にする徹底ぶり。目録の中に目当ての本かあれば雪の日だろうとすぐさま本屋まで押しかけるます。他にも、一度神田神保町に現れると、自分が持っている杖の決まった高さのところまで本を買わないと気が済まない老人などが登場します。

 

こんな人たちが何人もいれば、古書を巡って事件が起きるのもうなずけます。ちなみに作中のマニアたちについて作者は「限りなく現実に近い創作(P648)」と、言っているので決してオーバーに書いているわけではないようです。

 

また、以前紹介した『古書収集十番勝負』はコメディよりのサスペンスでしたが、今回はコメディ色はほとんどありません。また、トリックなどのミステリー要素も強くないので、マニアたちの執念が主題のサスペンスといえます。

 

 

出版業界の裏歴史

今回の作品でマニアたちの生態と並んで興味深かったのは、戦中、戦後の出版業界の裏歴史です。印刷業界の裏アルバイトである贋金作りの話や過酷な労働環境。発禁本の出版と警察の取り締まりの様子なとが描かれていて興味をそそられることが多かったです。

発禁になりそうなちょっとエッチなを売るために、会員登録制の組織を作って会報という形で配布する方法はなるほどと思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

古書について詳しく言及するのでなく、本探しもほとんどしないのが少し肩透かしでしたが、マニアたちの執念がリアルに描かれていて楽しめました。ただ、登場人物の人間関係が都合良すぎるのと、いかんせん長いで控え目の星三つです。

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