おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『99%の誘拐』 岡嶋二人 今ならいけるかも

   

書評的な読書感想文238

『99%の誘拐』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

岡嶋二人(作家別索引

講談社文庫 2004年6月

サスペンス ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

コンピュータを駆使した誘拐事件の話。インパクトは刊行当時のほうがあると思いますが、今読むとリアリティがあります。今の技術ならできそう。また、全体的にサスペンスよりですがミステリー要素もしっかりあります

 

 

あらすじ

末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

コンピュータを使った誘拐

今好きな作家で打線を組んでみた」で二番に入っている岡嶋二人さんの作品。岡嶋さんは日本では珍しい、二人一組の作家さんで徳山諄一さんがプロットを書き、以前紹介した井上夢人さんが執筆するスタイルだそうです(コンビ解散間際は井上さんがプロットのほうも担っていたようですが)。なので「打線を組んでみた」では、岡嶋さんと井上さん両方で二番ということにしています。

 

この作品は犯人である主人公が、コンピュータを駆使して誘拐を行うストーリーです。初出は1988年で作中でも、16ビットパソコンなんて、時代を感じさせる表現があったりします。そんな時代にコンピュータを使った誘拐なんてアイディアが出るのがすごいと思うし、井上夢人さんの『プラスティック』や『クラインの壷』を紹介したときにも書きましたが、刊行当時はかなりインパクトがあったと思います。

 

ただ、インパクトは当時のほうがあったと思いますが、リアリティはAIなどが一般的になった今のほうがあると思います。実際には実現不可能じゃないかという批判に対して解説に

営利誘拐などの重大犯罪をテーマにして小説を書く場合、万にひとつも不心得な模倣犯が現れぬよう、わざと犯行過程に実行不可能な手順を紛れ込ませておくのは、言わばミステリ作家としての良識だからだ。(P436,437)

なんて反論をしていますが、今の技術ならできてしまうのではないかと思ったりもしました。時代が岡嶋さんに追いついたかのかも。

 

 

ほぼサスペンスでちょっとだけミステリー

物語の主人公は誘拐を仕掛ける犯人です。しかも、犯人に肩入れしたくなるような背景があって、私なんかはかなりしっかりと犯人に感情移入しながら読みました。そういった読み方をすると、この物語は犯人が見事、誘拐を成功できるかどうかを楽しむサスペンスといえます。要所、要所で困難や不確定要素がおきて、最後まで手に汗握る展開が続きました。

 

一方で、一応ミステリー要素もあって、作中で起きた最大の謎が最後に解き明かされたりしています。個人的には使われているトリックはスマートだなと思いました。ただ、どんでん返しは起きないので、その点は岡嶋さんとしては意外でした。まあ、どんでん返しなんて必ずしも必要ではないと思うし、この作品はそういったのがないほうが面白いです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

前半で感情移入させられ、後半のスピード感ある展開でぐいぐい読まされました。時代を先取りした仕掛けや、スマートなトリックも面白いのですが、人間ドラマの部分がちょっと中途半端な気がするので(もっとドラマティックにするかあっさりするか)おすすめ度は控えめの星三つです。

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆ , ,