おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『桜ほうさら』 宮部みゆき 庶民が生き生き

   

書評的な読書感想文237

『桜ほうさら 上・下』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

宮部みゆき(作家別索引

PHP文芸文庫 2016年1月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

本筋の父親が巻き込まれた陰謀のミステリーよりも、主人公と長屋の人々の交流やはねっ返りの町娘との恋愛が楽しい作品。宮部みゆきさんが描く、江戸時代の庶民は外れがないです。ただ、ラストには納得できませんでした。

 

 

あらすじ

父の汚名をすすごうと上総国から江戸へ出てきた古橋笙之介は、深川の富勘長屋に住むことに。母に疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍に対し、写本の仕事を世話する貸本屋の治兵衛や、おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと手を差し伸べてくれる。家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、笙之介は「桜の精」のような少女・和香と出逢い……。しみじみとした人情が心に沁みる、宮部時代小説の真骨頂。(上巻作品紹介より)

 

 

宮部みゆきの描く庶民

以前紹介した『ぼんくら』シリーズや『本所深川ふしぎ草紙』など、宮部さんが描く江戸時代の庶民はやさしく、たくましいので私はとても好きなのですが、今回の作品でも、長屋の人々や寺子屋の先生をしている浪人など市井の人々が素敵に生き生きと描かれています。

 

ひょんなきっかけで料理屋が主催する大食い大会に、花見がてら参加しようする主人公と長屋の住人たち。花見をしながら弁当を食べたり、瀬戸物屋を覗いてみたりと、まるで目の前に情景が広がるかのように生き生きと描かれていて、とても楽しそうです。ほかにも、長屋の近くでけが人が出たときは、住人みんなで大騒ぎで医者を呼んだりけが人を戸板では込んだりと大変です。

 

宮部みゆきさんの時代物はいくつも読みましたが、宮部さんが描く江戸時代の庶民は外れがありません。

 

 

はねっ返りのヒロイン

今回の物語のヒロイン和香は桜の精のような美しい娘ですが、とある理由で自分の容姿に非常に強いコンプレックスを持っています。そのせいで、母親と上手くいかなくなったり、縁談を片っ端から断ることになります。なにより、とても気が強いはねっ返りな性格になってしまいます。

 

そんなヒロインの和香と主人公の笙之介は心を通わせることになります。優しい心根をもつ主人公が包み込むことで、頑なな和香の心を開かせる様子がとてもほほえましく、読んでいてちょっと気恥ずかしくもありますが、ほっこり癒されました。また、打ち解けた二人が協力して色々な事件の謎に迫るところも見所です。

 

 

本筋は期待はずれ

物語の本筋は家族にさえ期待されないくらい気弱だけど、優しい性格の主人公笙之介が、父親が巻き込まれた事件の真相を解き明かし、父親の汚名をそそぐために奮闘するお話です。

 

上にも書いたように、長屋の人や和香との交流の描写は秀逸なのですが、本筋自体はちょっと期待はずれでした。全体の文章の分量の割りに『ぼんくら』シリーズのような重々しさはありません。ラストのまとめ方も、ネタバレになるので詳しくは書けませんが、味方側の黒幕の行いに納得のいかないことが多々あったりして、ちょっと納得のいくものではありませんでした。

 

サイドストーリーのミステリー(こちらはとても面白いのですが)に分量を取られてしまい、本筋がちょっとおろそかになっているように感じました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

宮部さんの描く庶民にははずれがない一方で、本筋のミステリーいまいちでした。ただ、サイドストーリーのミステリーは面白く読めたので、おすすめ度は『ぼんくら』より一段下がった星三つです。

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