おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『凍える牙』 乃南アサ 女性刑事が主人公

   

書評的な読書感想文231

『凍える牙』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

乃南アサ(作家別索引

新潮文庫 2000年2月

警察 サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントをほぼ百文字で

女性刑事の生きづらさと謎の殺人事件、見所は二つ。警察組織での女性の心情と男性側の反応が上手く描かれていて、読んでいてのめり込みました。どっちの気持ちも分かる。殺人事件はラストの盛り上がりがなかなか。

 

 

あらすじ

深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか?野獣との対決の時が次第に近づいていた――。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。(作品紹介より)

 

 

女性刑事を主人公にした直木賞受賞作

物語はとある殺人事件を主人公の女性刑事とベテランの男性刑事がコンビを組んで捜査するところを中心に描かれています。女性刑事を主人公にした直木賞受賞作だけあって、本筋の殺人事件のみを追いかけるのではなく、主人公の女刑事が男社会の警察で生きる葛藤などもテーマになっています。

 

 

女の生きづらさと男の戸惑い

物語の前半のテーマは男社会の警察で働く女性の生きづらさです。ベテラン男性刑事と組まされ苦労する様子が描かれています。

とにかく、あの皇帝ペンギンのようなデカチョウと、何とかしてコミュニケーションを取る方法を考えなければならない。女としてではなく、仕事仲間として、コンビを組む相方として、受け入れてもらえる方法を探すより他にはないのだ。そうしなければ、今後の捜査に支障を来す。(P66)

主人公の音道貴子には事件以前に壁があることがわかります。

 

ただ、その一方で男性刑事の戸惑いも描かれています。貴子を扱いかね

全く、捜査以外のことでこんなにあれこれと考えなければならないなんて、なんと疲れることだろうと思った。(P86)

なんてぼやいています。

 

最終的にこのコンビが落ち着いた心の持ちようは、倫理的にはあまり正しくないのですが、現実に即した人間的な結論で正直共感できました。私もほぼ男しかいない職場なので、ほんの少しだけいる女性の同僚との距離感にはたまに悩んでしまいます。

 

同じ女性刑事を主人公に据えた誉田哲也さんの『ストロベリーナイト』など姫川シリーズが事件解決をテーマにしていて、女性刑事の生きづらさにほとんど触れずにいるのとは対照的といえます。

 

 

獣による咬殺事件

物語の本筋は謎の獣による咬殺事件です。前半では女性の生きづらさがテーマですが、後半は徐々に本筋の殺人事件にスポットライトが当たってきます。

 

犯人のバックボーンなど事件の真相が明らかになるにつれ物語もどんどん盛り上がり、ラストシーンでは感動すらあります。ただ、主人公が感情移入する先がちょっと変わっていて、正直私は理解できませんでした。なんでそこにそこまで感情移入するんだろうという疑問がわいてしまいました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

前半のテーマは興味深く読め、安易な結論が出なかったのも好感が持てます。また、ラストに向けた盛り上がりも良かったです。ただ、主人公の感情移入する先がちょっと微妙かなと思ってしまったので、おすすめ度はちょい控えめの星三つです。

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