おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『一絃の琴』 宮尾登美子 YouTubeで一絃琴の動画を見ました

   

書評的な読書感想文225

『一絃の琴』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

作者名(作家別索引

レーベル 1982年7月(ブログの画像等は新装版のものです)

人間ドラマ 時代(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

対照的な表現で一絃琴の道を極めようとする二人の女性の物語。明治や戦中戦後と激動の時代に芸術と共に生きた女性が描かれています。また、どっしりと重い文章で書かれているため、感情の揺らぎが腹に響きます。

 

 

 

あらすじ

5歳で漂白の旅絵師の弾く一絃琴に魅入られた土佐の上士の娘苗はその後の人生を琴に傾け尽す。師有伯への淡い恋心、不幸な結婚、土佐一絃琴の盛名を響かせた市橋塾、女弟子蘭子との確執。愛も憎しみも想いのすべてを一筋の糸に凝らした苗の生き方に、明治の女の矜恃と情念をみごと描出した直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

宮尾登美子の直木賞受賞作

今回の作品は『義経』と『天璋院篤姫』の二つの作品が大河ドラマ化されている宮尾登美子さんの直木賞受賞作品です。

 

物語は一絃琴に魅せられた二人の女性の生き様を描いています。一絃琴とは別名須磨琴とも呼ばれる一本の糸のみで演奏する琴のことです。物語は実際の一絃琴の演奏家がモデルになっており、物語の舞台の高知では今でも演奏会が定期的に行われているようです。

 

 

一絃琴と生きた二人の女性

物語の主人公の苗と蘭子の二人の女性は、元土佐藩の武士の娘で祖母に養育されるという共通点があります。また、子供のころに一絃琴を習い、結婚と共に一時は離れているも、今度は師匠として一絃琴と向かい合うといった経歴も似ています。(蘭子は苗の弟子ですが。)

 

そんな、似たようなバックボーンを持つ二人ですが、一絃琴に対するアプローチは正反対で、そのために苗と蘭子の確執があったり、蘭子が生涯、苗を恨む原因になったりします。

 

明治や戦中戦後の激動の時代を、武士の娘としての誇りしっかりともって、芸術に生きる女性の生き様が描かれています。

 

 

とにかく重い文章

曲が終り、旅絵師の亀岡さんが指から蘆管を外したとき、それまで拳の背で目を拭っては涙を膝に移していた五つの苗はとうとう堪え切れなくなり、しゃくり上げながら祖母の傍らに駆け寄って、

「おばば様、あの方に早うご報謝さし上げて」

と頭を下げて頼んだ自分の姿を、苗がいまもときどき、ふと目に浮かべる事がある。(P9)

上の文は物語の冒頭です。直木賞の選考委員も何にか指摘していましたが、かなり重い文章が特徴です。一文が長めで漢字が多く、正直読みやすい文章ではありません。

 

ただ、慣れてくると独特のリズムがあって読むスピードも増してきて、その上で登場人物の感情表現がなされると、重い文章がそのまま腹に響くように登場人物の感情を理解することができます。苗が一絃琴に感動した気持ちや、蘭子が師匠の苗を呪うかのように恨む気持ちなど、正の感情も負の感情もこの重い文章からしっかりと伝わってきます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

特徴的な文体に慣れるまでにちょっと時間がかかりました。ただ、慣れてしまえば登場人物の感情がしっかりと伝わってきます。さらには、祖母の教えを胸に武士の誇りを忘れずに激動の時代を、一絃琴に向き合って生きる苗や蘭子が鮮やかに浮かび上がります。

 

読みにくいのを我慢しても読む価値ありってことで、星四つです。

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