おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ビタミンF』 重松清 「F」はファミリー

   

書評的な読書感想文221

『ビタミンF』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

作者名(作家別索引

レーベル 2003年7月

家族 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

心に染みて元気になれる家族をテーマにした短編集で、タイトル通り心のビタミンになります。父親を中心に家族それぞれの心の揺らぎが描かれていて、私は共感できましたが読む年齢で見方が変わりそうな気がします。

 

 

あらすじ

38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか――」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

第124回直木賞受賞作

今回の作品は、以前紹介した『疾走』の作者、重松清さんの作品で直木賞受賞作です。この小説を紹介するのに一番適しているのは作者の後記だと思うのでちょっと引用します。

炭水化物やたんぱく質やカルシウムのような小説が片一方にあるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。そんな思いをこめて七つの短いストーリーを紡いでいった。

Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune……〈F〉で始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして物語に埋め込んでいったつもりだ。(P353)

個人的には七つの短編に共通するキーワードFamily、家族かなと。それをFather、父の視点から描いた物語で、タイトル通り心のビタミンになるような、心にしみてちょっと元気になれる物語だと思います。

 

 

アラフォーの父親が主人公

どの物語も主人公はアラフォーの父親です。若くはないが、老いたというには早すぎる中途半端な年齢。子供が思春期を向かえ難しい年頃に差し掛かっている主人公の、日常の微妙な苦悩や違和感が表現されていて、同年代の私は(未婚で子供はいませんが)共感できることも多かったです。

「またヘルシー定食か?」

「ああ……」

「こんなの四十になってから食えばいいんだって。なにが減塩・低カロリーだよ、経理や総務と営業は違うんだぞ、腹の減りぐあいが」

そうは言いながら、ミックスグリル定食に単品の海草サラダとヤクルトをつけているところが、やっぱり三十八歳の中途半端さ――なのかもしれない。(P28,29)

 

といった日常的な描写に共感してしまうので、子供がいなくても

そういう性格の息子だ。最初からわかっているし、あきらめてもいる。親は子供を選べない。たとえ、その子が「はずれ」だったとしても。(P79)

 

それが正しいか間違っているかは、わからない。父親とはずいぶん孤独な役回りなんだな、とも思う。だが、その孤独を引き受ける気になっている、いまは。(P148)

といった父親としての葛藤も、妙なリアリティーをもって読むことができました。

 

ただ、私が共感できたのは、どんぴしゃで主人公と同年代だったためで、もしかしたら年齢によって感じ方は変わってくるのかもしれません。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

引用部分がちょっと暗い内容なので物語全体が暗いように見えますが、実際は葛藤や心の揺らぎを乗り越えて前向きな結末の物語が多いです。でないと、心のビタミンにならないので。

 

登場人物の心の揺らぎに共感でき、ちょっと元気になれるってことで、おすすめ度は星三つです。

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