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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『蟹工船・党生活者』 小林多喜二 新語・流行語大賞にノミネート

   

書評的な読書感想文216

『蟹工船・党生活者』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

小林多喜二(作家別索引

新潮文庫 1953年6月 2003年6月改版

純文学 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

出版当時に為政者に恐れられ、近年ブームになったのが理由がよく分かります。蟹工船の悲惨さや党員の必死さが描かれている上に、物語としてきちんと面白い。また、事実を基にしてるだけあって迫力があります。

 

 

あらすじ

海軍の保護のもとオホーツク海で操業する蟹工船は、乗員たちに過酷な労働を強いて暴利を貪っていた。“国策”の名によってすべての人権を剥奪された未組織労働者のストライキを扱い、帝国主義日本の一断面を抉る『蟹工船』。近代的軍需工場の計画的な争議を、地下生活者としての体験を通して描いた『党生活者』。29歳の若さで虐殺された著者の、日本プロレタリア文学を代表する名作2編。(作品紹介より)

 

 

「蟹工船」

「おい、地獄さ行(え)ぐんだで!」(P8)

の書き出しで始まる、表題作の「蟹工船」。主に戦前、オホーツク海で蟹を漁獲し、それをそのまま缶詰に加工する設備を備えた船のことを蟹工船といいます。その蟹工船での常軌を逸した過酷な労働の様子を描いたのがこの物語です。

 

いわゆるプロレタリア文学の代表作といわれます。プロレタリア文学とは社会主義、共産主義的な革命的立場から描いた文学のことで、戦前は危険な思想と考えられ特高警察などに弾圧されています。実際に作者の小林多喜二は特高警察に逮捕され、激しい拷問の末に殺されています。

 

「蟹工船」は主人公のいない物語で、劣悪な労働環境で酷使される労働者が、団結、決起する様子を描いています。事実を基にしているだけあって、その劣悪で地獄のよう悲惨さが迫力ある文章で描かれている上に、ストーリーに起伏があって読んでいてハラハラドキドキできるところもあり、物語として面白いです。

 

搾取される側の人が読んだら共感できるでしょうし、心ある人が読めば義憤に駆られることでしょう。当時の為政者がこの話を問題視し、2008年に再ブームが来たのも納得できます。

 

 

「党生活者」

戦前、共産党員として警察に追われ逃亡生活をしつつ、軍需工場での労働者の環境改善のための運動を行う物語。作者の体験が基になっていて迫力のある描写が印象的です。

 

軍需工場の工員を啓蒙し、搾取されている今の状態がおかしいことを気付かせようとする主人公たち共産党員と、一時的な賃金値上げなど目先のことで工員を不満をそらそうとする工場側の攻防に緊張感があります。

 

また、警察の目を恐れて住処を転々とする主人公の逃亡生活はまるでスパイ映画のようで緊張感があります。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

戦前の共産党を弾圧する特高警察からしたら、この物語はきっと脅威だったともいます。迫力があり、物語として普通に面白いので、共感や同情、義憤など人の心を動かす力があります。世の中に広く出回っていたら相当影響力を持ったと思います。そう考えると、格差が激しい近年、再びブームになり、2008年の新語・流行語大賞にノミネートされたのもうなづけます。

 

あまり難しいことを考えずに、まずは物語として楽しむことをおすすめしますってことで、星四つです。

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