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小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『吉原手引草』 松井今朝子 これは傑作

   

書評的な読書感想文215

『吉原手引草』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆☆(星数別索引&説明

松井今朝子(作家別索引

幻冬舎文庫 2009年4月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

これは傑作。吉原のさまざまな階層の人の話を紡ぐことで、吉原の風習や人間模様が立体的に浮かび上がってきます。また、花魁失踪のミステリーもドラマチックです。今まで読んだ直木賞受賞作品で一番面白いです。

 

 

あらすじ

廓遊びを知り尽くしたお大尽を相手に一歩も引かず、本気にさせた若き花魁葛城。十年に一度、五丁町一を謳われ全盛を誇ったそのとき、葛城の姿が忽然と消えた。一体何が起こったのか?失踪事件の謎を追いながら、吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

吉原の立体像を描いた直木賞受賞作

物語は吉原で起きた花魁失踪事件の関係者の証言をまとめたものです。証言に答えている人々は多岐にわたり、吉原の遊女屋の主人、従業員、幇間、女芸者、女衒など吉原で生きる人の上から下まで。また、札差や大店の主人などのお客。

 

インタビューは基本的には花魁失踪事件の話をしますが、いろいろと脱線することも。この脱線した話が面白い。吉原の人間関係の悲喜交々や吉原の風習が語られるのですが、なにしろ上から下まで様々な階層の人間が語っているので、吉原の中の出来事が立体的に見えてきます。

 

例えば、借金の形に女房を吉原に売ったある男は、

わっちはそれまでずっとあいつのことを、なにも惚れて一緒になったわけじゃねえ、親方のいいつけで仕方なくもらってやったんだぐれえに思ってた。それがどうだ、やすやすとは会えぬ相手になると、いうのもお恥ずかしいかぎりだが、かけがえのねえ恋女房にみえてくるんだから人の心はふしぎだよ。(P40)

なんていってますが、どの登場人物もそれぞれがドラマを持っていて、そのドラマがどれも男女関係の難しさや矛盾を描いていて面白いです。

 

また、吉原の風習やいろいろなことがらのいわれが作中に書かれているのも興味深いです。「お茶を挽く」の語源やご祝儀として配る「紙花」のシステムなんかは思わず「へぇ~」と声を出してしまいました。

 

 

花魁失踪事件

物語は花魁失踪事件の謎解きが軸になっています。吉原随一の花魁・葛城がなぜ突如消えたのか、その謎が物語を読む推進力になっていて読む手が止まりませんでした。

 

物語の真相はかなり終盤まで秘密にされていて、結末はかなり劇的なので謎が解き明かされた時のカタルシスはかなり大きかったです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

たいした数を読んだわけではありませんが、いままで読んだ直木賞受賞作の中では一番面白かったです。花魁失踪事件の謎も面白いのですが、作中に

金や色や諸々の欲にかられた人の心がどう動くか、ハハハ、廓はそのことの学舎だからねえ。(P283)

 

世間は廓が嘘のかたまりだというが、しかしここほど男の本性を剥きだしにする場所もねえ。アハハハ、それこそがまさにこの世の真実なんだよ。(P316)

なんて表現される吉原の中の人間関係の悲喜交々を描いたエピソードが秀逸です。ときかくこれは傑作だということでおすすめ度は星五つです。

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