おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ラバーソール』 井上夢人 作者の信頼感の高さ

   

書評的な読書感想文213

『ラバーソール』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

井上夢人(作家別索引

講談社文庫 2014年6月

ミステリー サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

作品によってかなり読み味の違う作家というのが私なりの井上夢人さんのイメージですが、この作品は一つの物語の中で読み味が変化します。前半の胸の悪くなる展開が、後半どうなるかはぜひ読んで確かめてほしいです。

 

 

あらすじ

幼い頃から友だちがいたことはなかった。両親からも顔をそむけられていた。36年間女性にも無縁だった。何度も自殺を試みた――そんな鈴木誠と社会の唯一の繋がりは、洋楽専門誌でのマニアをも唸らせるビートルズ評論だった。その撮影で、鈴木は美しきモデル、美縞絵里と出会う。心が震える、衝撃のサスペンス。(作品紹介より)

 

 

井上夢人のイメージ

今好きな作家で打線を組んでみた。」で岡嶋二人さん名義と一緒に二番に入っている井上夢人さんの作品です。

 

私が持っている井上夢人さんのイメージはというと、変幻自在の読み味を持つ作家さんであるということです。『the TEAM ザ・チーム』を紹介したときにも書きましたが、娯楽作品から、息の詰るサスペンス、SFなどなど作品ごとにまったく読み味が違っていてどれも面白いのが特徴です。

 

そういう観点から行くと、今作は息の詰まるサスペンスということ、インタビュー形式の文章が連続している構成の二点で以前消化した『プラスティック』に近い読み味かもしれません。

 

 

突き抜けたストーカー

物語は非常に醜い容姿のために人とのかかわりが持てない主人公・鈴木誠がある女性に出会い、ストーカーになっていく過程を関係者の事情聴取を積み重ねることで浮き彫りする形式です。

 

まあ、この鈴木がとにかく胸糞悪いです。突き抜けたストーカーというのは心底相手のためを思って行動しているのに、相手からしたら全ての行為が迷惑で気持ち悪いことがわかります。かなりの分量をこの気持ち悪いストーカー行為の描写に割いているので、読んでいて正直しんどくなってきます。

 

 

作者への信頼感と変化する読み味

胸糞悪い話がかなりの長さで続くの挫けそうになりますが、井上夢人さんがただのストーカー行為を描いているだけの作品を書くわけがない、必ず何か驚くべきことがおきるはずだという作家への信頼感だけで先へと読み進めることができました。

 

そして、ある時点で物語は一気に展開し、前半とは全く違った読み味の作品になります。これ以上は読む楽しみを削いでしまうので詳しくは書けませんので、ぜひ読んで確かめて欲しいです。作品によって読み味の変わる井上さんですが、今回は一つの物語の中で読み味が変化します。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

気持ちの悪い前半で挫けずに最後まで読めたのは、必ず面白い作品を書くであろうという作者への信頼感があったからです。そういう意味では、井上夢人さん初挑戦の人にはおすすめできません。

 

一方で井上さんを読んだことがある、そして、面白いと思ったことがある方にはぜひ読んで驚いて欲しいってことで、おすすめ度は星四つです。

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