おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『号泣する準備はできていた』 江國香織 もうちょいストーリー性が欲しい

   

書評的な読書感想文211

『タイトル』(文庫)

おすすめ度☆☆(星数別索引&説明

江國香織(作家別索引

新潮文庫 2006年7月

恋愛 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

何が良いのかよく分からない、というのが正直な印象。とても美しい文章ですが、物語に起伏が少なく苦手なタイプの話です。例えるなら、人と人との心のすれ違いの時におきる摩擦熱のようなエネルギーが描かれてます。

 

 

あらすじ

私はたぶん泣きだすべきだったのだ。身も心もみちたりていた恋が終わり、淋しさのあまりねじ切れてしまいそうだったのだから――。濃密な恋がそこなわれていく悲しみを描く表題作のほか、17歳のほろ苦い初デートの思い出を綴った「じゃこじゃこのビスケット」など全12篇。号泣するほどの悲しみが不意におとずれても、きっと大丈夫、切り抜けられる……。そう囁いてくれる直木賞受賞短篇集(作品紹介より)

 

 

『きらきらひかる』の作者の直木賞受賞作

『きらきらひかる』で有名な江國香織さんの直木賞受賞作品。12編の短編からなる作品集で、多くの話で人と人とがすれ違う時に起きる、摩擦熱のようなエネルギーを描いています。離婚直前の夫婦や、嫁と姑などを描くことによって、二人の人間の間に存在する微妙な空気というか負のエネルギーのようなものが表現されています。

 

ただ、どの作品もストーリーの起伏があまりなく、個人的にはすごく苦手です。何が良いのか分からないというか、どこでを楽しんで良いのか見えない作品が多かったです。

 

文章はとても美しいと思えたのですが、物語としてストーリーを楽しみにくい作品は苦手です。

 

 

「じゃこじゃこのビスケット」「溝」

気に入った作品を二つ紹介します。

「じゃこじゃこのビスケット」。主人公の十七歳の少女が小学校の頃の同級生の男の子と初デートをする話。半ば強引にドライブつれてってもらったはいいが、盛り上がることもなく二人とも押し黙ってしまいます。このうまく行かない初デートの様子がうまく描かれています(ややこしい言い回しですが)。上にも書いた、うまくいかないデートによって生まれた、二人の人間の間にある微妙なエネルギーが描かれています。

 

ただ、最後のほうで

何ひとつ、ちっとも愉快ではなかった。美しくもなく、やさしくもなかった。それでも思い出すのは、あの夏の日のことだ。(P43)

なんて書かれているのが印象的です。

 

「溝」。離婚間近の夫婦が夫の実家に行く話。心が完全に離れているのにそれを隠して夫の実家で食事をする様子が、ものすごく空々しく感じられて、ある意味で人間味が感じられます。

「私たち一度は愛しあったのに、不思議ねぇ。もう全然なんにも感じない」

志保は言った。

「ねえ、どう思う?そのこと」(P99)

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

以前紹介した『光と影』の作者で、直木賞選考委員の渡辺淳一さんは直木賞受賞作には人間を描くことを求めていますが、この作品は人間がしっかり描かれていると思います。すれ違う二人の人間の微妙な心の動きの描写はすごいのかなと。ただ、物語というかストーリー性がほとんどなく、読んでいてしんどかったです。

 

私は読書には基本的にエンタメよりの作品が好きですし、読書には物語としての楽しさを求めるので正直この作品は苦手です。なので、おすすめ度は残念ながら星二つです。

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