おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『利休にたずねよ』 山本兼一 濃茶を飲んでみたい

   

書評的な読書感想文203

『利休にたずねよ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

山本兼一(作家別索引

PHP文芸文庫 2010年10月

時代 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

面白い。時間を逆行することで、千利休の美意識の根幹を明らかにする構成が秀逸。また、禍々しさを感じさせるほど美にこだわる利休のキャラ設定も素晴らしいです。茶の湯や利休に興味があるならぜひ読むべき。

 

 

あらすじ

女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭へと昇り詰めていく。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、どのようなものだったのか。思いがけない手法で利休伝説のベールが剥がされていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

時間をさかのぼる

物語は千利休が秀吉に命じられて切腹する日の朝から始まります。そこから少しずつ時間をさかのぼることで、薄皮をむくように利休の素の姿があらわになり、美意識の根幹が明らかにされます。この構成がなんとも秀逸です。時系列をいじる構成の物語の多くは読みにくさが先に立つことが多いのですが、この物語ではそんなことはなく、むしろ効果的に感じられます。

 

物語の時間はある地点までさかのぼります。それは、作中に幾度となく語られる、茶人利休誕生の瞬間です。そこで物語が終わっても十分傑作だと思うのですが、最後の最後に意外な結末がまっています。読んだ瞬間鳥肌が立ってしまうほどインパクトのあるシーンで、このラストのために読む価値があると思います。

 

 

利休の美意識

物語の主人公は茶の湯の世界の巨人・千利休です。。武力を持たない商人上がりの茶人が、天下人である秀吉の側近にまで成り上がったのだから生半可な人物ではないのはわかります。ただ、この物語の利休は禍々しさすら感じられるほど美に執着していて、作中で語られるその美意識や鋭さは強烈なインパクト上がります。鋭すぎるがゆえに秀吉に疎まれ切腹を命じられるのもうなずけます。

 

そんな利休の美意識で印象に残ったものを

(ある灯籠について)評判を聞いた秀吉が欲しがったので、利休は灯籠の笠をわざわざ打ち欠いたのだという。

「割れておりますゆえ、献上しかねます」

と、断りの口実にするためだったが、打ち欠いてみれば、さらに利休の好みのすがたになっていた。(P60)

 

利休は、一見、なんの欲もこだわりもなさそうな顔をしている。

しかし、欲が深いといえば、あの男ほど欲深い者もおるまい。

美をむさぼることに於いて、その執着の凄まじさといったら、信長や秀吉の天下取りへの執着よりはるかに壮絶ではないか。(P289)

 

――侘び茶といえど、艶がなければどうしようもない。

いまは、侘び、寂び、枯、そんなくすんだ美学ばかりが賞賛されてるが、艶を消し去り、鄙めかした野暮ったい道具をそろえても、こころは浮きたたない。

――だいじなのは、命の優美な輝きだ。(P486,487)

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

直木賞も受賞したこの作品。千利休が主人公なので、茶の湯のシーンが結構出てきます。なので、茶の湯にまったく興味がない人は厳しいかもしれません。そこがこの物語の唯一のマイナスポイントかもしれません。私は、お茶の心得なんぞはないのですが、母親がたまに薄茶を立てることがあったので、ほんのちょっとだけ茶の湯の知識と興味があったのすんなり楽しめました。

 

利休や茶の湯にちょっとでも興味がある人はぜひ読むべきってことで、おすすめ度は星四つ。

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