おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『夢・出逢い・魔性』 森博嗣 S&Mシリーズより好きです

   

書評的な読書感想文202

『夢・出逢い・魔性』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

森博嗣(作家別索引

講談社文庫 2003年7月

サスペンス ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

私の中ではS&Mシリーズ越えを決定づけた作品。キャラの個性、ちょっとアンフェアな気もするトリックや仕掛け、本筋と関係のないさまざまな事象に対する考察。このシリーズの要素がしっかり出ていて面白いです。

 

 

あらすじ

20年前に死んだ恋人の夢に怯えていたN放送プロデューサが殺害された。犯行時響いた炸裂音は一つ、だが遺体には二つの弾痕。番組出演のためテレビ局にいた小鳥遊練無は、事件の核心に位置するアイドルの少女と行方不明に……。繊細な心の揺らぎと、瀬在丸紅子の論理的な推理が際立つ、Vシリーズ第4作。(作品紹介より)

 

 

Vシリーズ第四弾

瀬在丸紅子を主人公としたミステリーシリーズ、「Vシリーズ」の第四弾です。ワンパターンと言えなくもないのですが、このシリーズらしさがある作品になってます。物語の人間関係がわかった方が楽しいと思うので、シリーズを順番に読むのをおすすめします。

 

ここまでシリーズ作品の『黒猫の三角』『人形式モナリザ』『月は幽咽のデバイス』と順番に読んできましたが、私の中では今回で「Vシリーズ」が『すべてがFになる』の「S&Mシリーズ」を超えたと確信した作品になりました。単体としては今のところ『すべてがFになるが』別格ですが、シリーズとしては、犀川と萌絵のコンビの「S&Mシリーズ」よりも、四人が活躍する「Vシリーズ」の方が好きです。

 

 

三つのらしさ

このシリーズには三つのらしさがあって、今作もそのらしさが出ていると思います。

 

一つ目はキャラクターの個性。明るく天真爛漫な紫子のにぎやかし、浮世離れした紅子の推理、保呂草の胡散臭さと捜査力と個性あふれるキャラが活躍します。そして私のお気に入りのキャラである練無。性格的には一番常識人だけど、女装趣味があったりしてなかなか癖のあるキャラです。毎回、物語のキーになる動きをすることが多く、今回も事件の核心に位置するアイドルと行方不明になったりします。一番常識人あるが故に回りに振り回されているのが微笑ましいです

 

二つ目はちょっとアンフェアな感じのトリックや仕掛け。今までの三作品ではメインとなるトリックにちょっとアンフェアな匂いが漂いますが、今作は本筋にあまり関係のないヘンな角度で最後にどんでん返しがああります。この仕掛けはいるか?と心の中で突っ込んでしまいました。

 

三つ目は本筋にあまり関係ないところで展開される、さまざまな事象に対する考察。作者の森さんの独特でちょっとシニカルな考えが(おそらく)反映されていて面白いです。今回、印象に残ったのは、テレビ論。

「何でも一方向から捉える、というのがカメラだもの」紅子は言う。「報道というのは、私たちの目や耳を補強してくれている、と思うでしょう?そうではなくて、足と頭が動かないようにしているだけなのよ」(P42)

 

遠い国の内戦、経済問題、選挙……、次々にテレビは話題を切り替える。生きものを次々に殺すように、こうして情報は簡単に殺されていく。(P180)

なんて書いています。これ以外に今回気になったのは、推理小説にありがちなある現象について。

行く先々で凄惨な事件(少なくとも新聞や週刊誌にはそう表現される)が、私たちを待ち受けたかのように起こるのだ。(中略)

案外、単なる偶然かもしれない。世の中にこれだけ大勢の人がいて、毎日どこかでは必ず何らかの事件が発生しているわけだから、その確率の頂点に私たちがたまたまいる、したがって、このような物語にもなる、ということ。そう考えることが、それほど不自然とも思えない(そもそも、考えるのが面倒だが)。(P28、29)

いやいや、不自然でしょう。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

今作はシリーズの特徴がしっかり出ていて楽しめました。単体の作品としては『すべてがFになる』には及ばないものの、「Vシリーズ」のよさが凝縮されているってことで星四つです。

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