おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『恋文』 連城三紀彦 いつの間にか200冊目

   

書評的な読書感想文200

『恋文』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

連城三紀彦(作家別索引

新潮文庫 1987年8月

恋愛 家族(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

面白い。トリッキーな設定やミステリー風な仕掛けも面白いのですが、なにより、愛するが故に身を引くかそれとも我を通すのか、その葛藤が真に迫ります。ミステリーも書く方なので、そちらも読んでみたいと思います。

 

 

あらすじ

マニキュアで窓ガラスに描いた花吹雪を残し、夜明けに下駄音を響かせアイツは部屋を出ていった。結婚10年目にして夫に家出された歳上でしっかり者の妻の戸惑い。しかしそれを機会に、彼女には初めて心を許せる女友達が出来たが……。表題作をはじめ、都会に暮す男女の人生の機微を様々な風景のなかに描く『紅き唇』『十三年目の子守歌』『ピエロ』『私の叔父さん』の5編。直木賞受賞。(作品紹介より)

 

 

テーマは家族内恋愛か?

連城三紀彦さんが直木賞を取った短編集。五本の短編からなっていますが、全体のテーマは「家族の中の恋愛」かなと思います。家族と恋愛というと遠い存在というか、対極にある存在ですが、この短編集ではその対極のものが一つに詰め込まれています。

 

結婚十年目にして夫に家出された女性が、夫に対する愛情の再確認を迫られる表題作「恋文」。受験のために尋ねてきた姪の娘と話をするうちに、姪との淡い恋を思い出す「私の叔父さん」など、家族関係の男女(夫婦はもちろんそれ以外も)の恋愛を描いています。

 

家族と恋愛という相反するものを一つにまとめるためか、ちょっとトリッキーな設定の物語が目立ちます。上に書いたもの以外にも主人公の男性と義理の母親の二人暮らしの話などがあります。トリッキーな設定で最初は違和感を感じますが、読んでいくうちに物語として必要な設定だと納得ができました。

 

 

ミステリー風な仕掛け

ミステリー作家として名を馳せた連城さんだけだけあって、恋愛がテーマのこの短編集でもミステリー風の仕掛けが多く見られます。主人公と義理の母親の同居の様子を描いた「紅き唇」では、最後の最後で義理の母親が隠していた秘密が明かされます。また、「私の叔父さん」では、物語のキーアイテムである五枚の写真の秘密が最後に明かされたりします。

 

トリッキーな設定とはいえ比較的単純な恋愛物の中に、ミステリー風の仕掛けがあることで最後まで飽きずに読むことができました。

 

 

我を通すか、引くべきか

短編の中で何度も出てくるシチュエーションが愛するがために我を通すか、愛するがゆえに身を引くかの選択です。

愛が本当に、将一の言うように、相手に一番やりたいことをやらせる勇気なら、自分との鎖を断って相手に完全な自由を与える優しさ(P50)

なのかと言った問いが、物語の中では幾度となく繰り返されています。

 

結局我を通すか、身を引くかはそれぞれの短編で違いますが、選択するまでの葛藤が真に迫ります。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

ほぼ満票で直木賞を受賞しただけあって、とても面白い作品です。トリッキーな設定やミステリー風な仕掛けの下には、人間の葛藤ががっちり描かれています。他の作品、特に連城さんの得意分野のミステリーを是非とも読んでみたいってことで、星四つです。

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