おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『波のうえの魔術師』 石田衣良 ドラマきっかけ

   

書評的な読書感想文197

『波のうえの魔術師』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

石田衣良(作家別索引

文春文庫 2003年9月

経済 サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

石田衣良さんらしさのある金融犯罪小説。巨大銀行にひと泡吹かせるという構図は、ワクワク感いっぱいで読めました。ただ、軽い語り口なのと、具体的な悪者が出てこないので、緊張感が薄く、感情移入もし辛かったです。

 

 

あらすじ

あの銀行を撃ち落とせ!謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの“おれ”だった。マーケットのAtoZを叩きこまれた青年と老人のコンビが挑むのは、預金量第三位の大都市銀行。知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは……。新時代の経済クライムサスペンスにして、連続ドラマ化話題作。(作品紹介より)

 

 

ドラマ『ビッグマネー! 〜浮世の沙汰は株しだい〜』きっかけ

私にしては珍しくドラマがきっかけで興味を持った作品です(今回は再読)。『ビッグマネー! 〜浮世の沙汰は株しだい〜(ウィキペディア日本語版2016年10月14日取得)』という作品で、主演がTOKIO長瀬智也さんです。タイトルからも分かる通り株式投資をテーマにしたサスペンス経済ドラマです。当時大学生で何とはなしに株式投資に興味らしきものを持っていたので、毎週ワクワクしながら観た記憶があります。特に敵役の原田泰三さんが憎らしいエリート銀行員を好演していました。

 

 

石田衣良さんらしい金融犯罪小説

小説のほうは石田衣良さんらしい軽い語り口の一人称で、代表作の『池袋ウエストゲートパーク』を彷彿とさせます。語り以外にも主人公の「おれ」と『池袋~』の「マコト」の正義のあり方や、悪を打倒するためには犯罪も厭わない考え方が似ているかなって思います。

 

これは私の勝手な想像ですが、物語の雛形は『池袋ウエストゲートパーク』シリーズを考えている時に生まれたのではないかと思います。老人を食い物するかのような商品を売る悪の銀行をぶっ潰すという構図は、大きな悪に知恵を使って立ち向かう『池袋ウエストゲートパーク』っぽい所もあるかなと。ただ、流石に株式うんぬんや銀行を倒すといった話は『池袋ウエストゲートパーク』ではできないので、この小説を書いたのかと思いました。

 

なので、『池袋ウエストゲートパーク』が好きで株式投資などの話が苦手じゃない人はかなり楽しめるのではないかと思います。巨大な銀行に一泡吹かせるワクワク感は一見の価値があります。

 

 

切れのある台詞

軽い語り口以外にもう一つ石田衣良さんっぽいのが切れのある台詞です。

『ほんとうに貧しい人というのは、みんなといっしょに貧しい人間のことだ。ひとりきり孤独に貧しいものは、まだ金をつくっていない金もちにすぎない』(P32)

 

「結局のところ、大学の成績などその人間の権威への従順度をはかるものさしにすぎない。まじめにやりなさい、いうことをききなさい、模範解答を覚えなさい。きみは高等教育で自分だけのオリジナリティを求められたことがあったかね」(P69)

 

「日本人は金を後ろ暗いもの、汚いものと考える傾向がある。金で金を生むのは汗をかかない最低の仕事だと見なしている。そろそろわたしたちはつぎの段階にすすむ必要があるのではないだろうか」(P272)

印象に残る台詞が多いです。ちなみにうえの台詞はすべて主人公の師匠の台詞です。

 

 

敵役は欲しいところ

上にも書いたようにドラマきっかけでこの物語読んだのですが、上に書いた原田泰三さん演じるエリート銀行員が小説は出てきません。というよりも、悪の象徴としての銀行は出てきますが、具体的な敵役が不在です。なので、軽妙な語り口とあいまって緊張感は薄いのかなと。もっと言えば感情移入がし辛かったです。

 

具体的で憎らしい敵役がいるからこそ、正義サイドに肩入れできると思うのですが、それがないのはちょっと残念でした。ただ、どっぷり感情移入させずに軽く読ませるのが石田さんのねらいのような気もします。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

軽い語り口でサクサク読め、巨大銀行に一泡吹かせるワクワク感も楽しめます。『池袋ウエストゲートパーク』が好きな人なら楽しめると思います。ただ、敵役がいないせいでちょっと物語に入り込めないところがあったので、おすすめ度は星三つどまりです。

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