おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『〈完本〉初ものがたり』 宮部みゆき 完本だけど完結ではない

   

書評的な読書感想文196

『〈完本〉初ものがたり』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

宮部みゆき(作家別索引

PHP文芸文庫 2013年7月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

宮部さんらしい人情捕物ミステリー+季節の食べ物「初もの」。料理は美味しそうだし、料理とミステリーのトリックがリンクしている話は鮮やかです。ただ、完本とあるのに、稲荷寿司屋の謎が解決しないのは残念。

 

 

あらすじ

文庫本未収録の三篇を加え、茂七親分の物語が再び動き始めた!茂七とは、手下の糸吉、権三とともに江戸の下町で起こる難事件に立ち向かう岡っ引き。謎の稲荷寿司屋、超能力をもつ拝み屋の少年など、気になる登場人物も目白押し。鰹、白魚、柿など季節を彩る「初もの」を巧みに織り込んだ物語は、ときに妖しく、哀しく、優しく艶やかに人々の心に忍び寄る。ミヤベ・ワールド全開の人情捕物ばなし(作品紹介より)

 

 

完本だけど完結ではない

今回の作品は、以前に紹介した『本所深川ふしぎ草紙』と同じ、回向院の茂七が主人公の人情捕物ばなしです。『本所深川~』が本所七不思議とリンクしてる連作短編集ですが、今作ではその季節で初めて出てきた食べ物「初もの」が物語のキーワードになってる連作短編集になっています。

 

「完本」とついているのは、1997年に出版された『初ものがたり』の短編6作に、2001年に発売された『愛蔵版初ものがたり』限定の1作、さらに未収録の短編2作の計9作がまとめてあるので「完本」とついているようです。なので、『初ものがたり』を今から読む人は、間違いなく『完本初ものがたり』を読むべきです。

 

ただ、完本ではありますが、完結はしておらず物語の重要人物である稲荷寿司屋の親父の謎は解決していません。なので、無印や愛蔵版から完本を読むときに、謎が明かされると思って読むとがっかりするかもしれません(私はがっかりしました)。

 

あとがきで続きを書くようなことが言われているのでそこに期待です。

 

 

料理+ミステリー

がテーマです。例えば、ある棒手振りの魚屋が茂吉に相談を持ちかけます。なにごとかと聞くと、初鰹を千両で買いたいという客が現れたが売ってしまっても大丈夫かというもの。茂吉が調べを入れると十数年も前からの因縁が絡んでたという話などです。

 

また、事件に料理が直接関わらないこともあります。川から引き上げられた裸の女性の水死体、身元はわかり、容疑者も浮かび上がりますが、アリバイがあります。また、なぜ犯人は裸にしたのか謎が残ります。そんな時に物語の影の主人公の稲荷寿司屋の親父の店で蕪汁をすすりながら茂吉はあるひらめきをします。

 

この稲荷寿司屋の料理がものすごくうまそうで、なおかつ、事件解決の糸口になっていることがあります。料理と事件がうまくリンスしている話は、とても鮮やかで読んでいてすっきりできます。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

宮部みゆきさんらしい人情捕物の上に、料理もうまそうでファンなら楽しめます。ただ、個人的には、稲荷寿司屋の親父の謎が未解決なのと、同じ人情捕物の短編の『本所深川ふしぎ草紙』や『幻色江戸ごよみ』ほど、どっぷり濃密に登場人物の感情が描かれていないのがちょっと不満です。なので、おすすめ度は星三つです。

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