おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『高円寺純情商店街』 ねじめ正一 今は「ねじめ民芸店」として阿佐ヶ谷に

   

書評的な読書感想文194

『高円寺純情商店街』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

ねじめ正一(作家別索引

新潮文庫 1992年4月

家族 お仕事(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

子供の目から見た昭和な商店街の物語。丁寧でリアルな乾物屋の日常の描写と懐かしい昭和の雰囲気が味わえます。個人的には、夫婦の微妙な距離感が上手く描かれているのが印象的でした。ただ続編を読むかは微妙です。

 

 

あらすじ

高円寺駅北口「純情商店街」。魚屋や呉服屋、金物店などが軒を並べる賑やかな通りである。正一少年は商店街の中でも「削りがつをと言えば江州屋」と評判をとる乾物屋の一人息子だった―。感受性豊かな一人の少年の瞳に映った父や母、商店街に暮らす人々のあり様を丹念に描き「かつてあったかもしれない東京」の佇まいを浮かび上がらせたハートウォーミングな物語。直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

昭和30年代ごろの商店街

物語は昭和30年代ごろと思われるJR中央線の高円寺駅近くの商店街が舞台です。主人公は乾物屋の一人息子の中学生・正一で、彼の目から見た乾物屋の姿や商店街の姿が丁寧でリアルな描写で描かれています。

江州屋乾物店の一日は、かつを節削りから始まる。

朝六時、裏口の土間を開けると、母親が問屋の大箱の中から磨いてない汚れたままのかつを節を流しに積み上げていく、それを金だらいに浸け、カビやほこりをタワシで落とすまでが母親の役目だ。

かつを節がきれいになったところで、それを三段重ねの金のせいろに入れてふかし、やわらかくするのだが、これは江州屋乾物店の創業以来、ばあさんの役目ときまっている。ふかしが足りないと芯が固くてきれいに削れず、反対にふかしがすぎるとかつをの旨味が抜けて味が落ちる。「江州屋の削りがつを」が中央線沿線界隈でなかなかの評判なのは、時間にすれば三、四十分のこのふかし具合に夜のである。(P10)

物語の冒頭です。この後、かつを節を削るシーンが続きます。実際に乾物屋の倅だった作者だから書ける、丁寧でリアルな描写がこの物語の魅力です。

 

また、乾物屋の風景以外にも、魚屋を初めとした隣近所の店や、銭湯などの懐かしい昭和を感じさせる商店街の描写も見所です。

 

 

夫婦の微妙な距離感

と書くと隙間風でも吹いているように思えてしまいますが、そうではなく、子どもの目から見た夫婦の機微が描かれています。例えば

江州屋乾物店では父親が最初に朝の新聞を読む。父親が読み終わるまで、家族は新聞を開いてはいけないことになっているが、新聞に入っているチラシだけは母親が先に抜いて見てもいいことになっているのだった。(P160)

と亭主関白のようで、実は「母親は、父親を思い通りに動か(P63)」す方法を知っていたりします。

 

機嫌の良し悪しや体調などに影響されながら変化する夫婦の微妙な間合いを、子どもの目線からうまく捉えているのがこの物語のもう一つの見所だと思います。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

私は昭和50年代の生まれなので、作中に出てくるような商店街は知りません。ただ、蠅取り紙や富士山の絵が似合う銭湯などの描写を読むと、なぜか懐かしい気持ちになってしまいました。

 

また、夫婦の微妙な距離感を子どもの目線から見た描写も面白いのですが、すでに出ている続編を読むかというとちょっと微妙かなってことでおすすめ度は星三つです。

 

ちなみに、作中のモデルの乾物屋は民芸店に鞍替えして、今は阿佐ヶ谷にあるそうです。オーナーも代替わりしてもちろん作者のねじめさん。

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