おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『芋虫(幽霊塔)』 江戸川乱歩 宮崎駿にも影響

   

書評的な読書感想文193

『芋虫(幽霊塔)』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

江戸川乱歩(作家別索引

角川書店 1973年5月(ブログの画像は岩波書店版の『幽霊塔』です)

ミステリー ホラー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

短編三作と長編一作の構成。長編の『幽霊塔』が面白い。妖しげな雰囲気でサスペンス、ミステリー、ホラーとして楽しめました。物語の核になるトリックが、時代を先取りしていて、今読むからこそすごいと分かります。

 

 

あらすじ

その物は、無気味な爬虫類の格好で胴体を波のようにうねらせ、深い死の淵に向かってジリジリうごめいていた。──華々しい戦功をあげながらも、砲弾の破片で四肢を吹き飛ばされ、耳も口もつぶされて、まるで、黄色の芋虫のようにぶざまに変わりはてた須永鬼中尉。だが、看護に懸命な貞淑だった妻の心に巣くっていたいまわしい嗜好が突然、爆発!自由を失ったあわれな片輪者の夫のからだをもてあそぶ、脂ぎった三十女の醜怪な生活の果ては……。江戸川乱歩の代表傑作。(作品紹介より)

 

 

作品の成り立ち

古本屋でかなり古い版の『芋虫』を購入。中身は『芋虫』、『赤い部屋』、『踊る一寸法師』の短編三編と長編の『幽霊塔』という構成。『芋虫』、『赤い部屋』は以前紹介した『江戸川乱歩傑作選』にて読了済みで、今回の目的は『幽霊塔』。なので、このページは『幽霊塔』のことしか書いてありません。

 

ちなみに、『芋虫』の感想は上の『傑作選』の感想のページに書いてあるのですが、一言だけ言うと「短編だけでも読む価値のある傑作です」。

 

 

宮崎駿にも影響を与えた『幽霊塔』

あらすじは本の裏面に載っている作品紹介をそのまま引用しているので内容が『芋虫』のものなので、ここで『幽霊塔』のあらずじを紹介します。

 

「主人公の北川光雄は幽霊が出ると噂され、財宝が隠されているともいわれる時計塔で謎の美女・野末秋子に出会い、引かれていきます。何かの秘密を抱えていて、打ち解けてくれない秋子、その周りをクモを飼う男、猿を連れた女、救い主と呼ばれる男など怪しげな人間が取り巻きます。時計塔の謎の美女・秋子の秘密をめぐる、ミステリー&ホラーの傑作。」

 

元々はアリス・マリエル・ウィリアムソンの『灰色の女』を翻案とした黒岩涙香さんの小説『幽霊塔』があり、それを江戸川乱歩がリライトしたのがこの作品です。

 

宮崎駿さんが監督を務めたアニメ『ルパン三世 カリオストロの城』にも影響を与えていて(確かに共通点が見られます)、その関係からか最新の岩波書店版の『幽霊塔』では、宮崎駿が挿絵を書いています。

 

 

時代を先取りしたトリック

物語の大きな謎は、幽霊塔で起きた殺人事件の真相、幽霊塔の財宝のありか、謎の美女・秋子の秘密です。すべての謎の中心にいる秋子の秘密を守るためのトリックがこの物語の最大の見せ場だと思うのですが、これが完全に時代を先取りしたトリックでかなりすごいです。

 

上にも書いたとおり複雑な成り立ちをした物語なので、誰が考えたトリックかはわかりませんが、最低でも乱歩が書いた1937年以前に考えられたトリックであることは間違いないです。80年以上前にこんな時代を先取りしたすごいことを考える人がいたことに驚きました。

 

たぶん当時の人たちが受けた衝撃よりも、現代の人が読んだほうが受ける衝撃は大きいと思います。今読むからこそ、時代を先取りしているすごさが分かるからです。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

乱歩らしい妖しげな雰囲気の中で、複雑に絡み合った人間関係、次々現われる謎、怪しい登場人物、そして衝撃的なトリック。面白くないわけがないってことで、おすすめ度は星四つです。

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