おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『太陽のパスタ・豆のスープ』 宮下奈都 2016年本屋大賞受賞作家

   

書評的な読書感想文190

『太陽のパスタ・豆のスープ』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

宮下奈都(作家別索引

集英社文庫 2013年1月

料理 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

主人公が自信を取り戻すために、浮き沈みしながらも悪戦苦闘する様子に共感できました。あるあると思えることがしばしば。また、何気ない台詞や表現がとても印象的で、この作者の他の作品も読んでみたくなりました。

 

 

あらすじ

結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽。失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは“ドリフターズ(やりたいこと)・リスト”の作成だった。自分はこれまで悔いなく過ごしてきたか。相手の意見やその場の空気に流されていなかっただろうか。自分の心を見つめ直すことで明日羽は少しずつ成長してゆく。自らの気持ちに正直に生きたいと願う全ての人々におくる感動の物語。(作品紹介より)

 

 

2016年本屋大賞受賞作家

『羊と鋼の森』で2016年の本屋大賞を受賞した宮下奈都さんの作品。結婚直前に婚約を破棄された20代後半の女性が、ドリフターズ・リストという自分のやりたいことを書いたリストを制作し、その内容を実行していくことで、浮き沈みしながらも自信を取り戻していく物語。

 

物語の設定と物語のキーワードという点が以前紹介した小川糸さんの『食堂かたつむり』に似ていたりもします。ただ、こちらの作品では、劇的な何かが起きることもなく、日常生活の中で主人公が自信を取り戻すきっかけを手に入れるので、より物語に入りやすいかもしれません。

 

 

浮き沈みの日々

婚約解消され意気消沈している主人公は、とある人の勧めで、ドリフターズ・リストなるやりたいことリストを制作することで、自信を取り戻そうとします。が、そんな簡単に前向きなれるはずもなく、浮き沈み、悪戦苦闘をしつつ日常を送ります。そして、そういった描写にすごく共感ができます。

 

ちょっと体調を崩した際に、上司にゆっくり休むことをすすめられ

「じゃあ、お言葉に甘えて、少し休ませていただくことにします」

しかし、そう言った瞬間にぽきんと何かが折れる音が聞こえた気がした。張っていた意地がしわしわ縮んでいくのがわかる。通話を切るボタンを押しながら、失敗したかもしれない、と思った。もしかすると、まずいことになるかもしれない。(P129)

と感じでいます。この微妙な心理がすごく共感できました。がんばっていたのが、他人に甘えてしまった瞬間、つっかえ棒が外れてしまったような気持ち。うまいなと。

 

他にも、名作小説を読むとドリフターズ・リストに書いたのに、最初の30ページで挫折してしまうところとか、別に私はドリフターズリストを書いたことはありませんが、似たような経験があるので共感できました。

 

 

印象的な表現

物語に共感できるだけでなく、ちょっとした表現がとても印象的で、記憶に残るのもこの物語の特徴かなと思います。

瀬戸口くんってどんなひとなんだろう。たぶん冴えない人だとは思う。いい人だといわれるくらいだ物。それだけの人である可能性が高い。そうでなければ、かっこいい人よ、とか、やさしくて面白い人よ、とか、他に表現があるはずだ。(P274)

あるオシャレなエステに対しては

それならそうと看板に書いておいてくれればよかったのに。あるいは電話で予約をした時点で確かめてくれればよかった。うちはある程度以上の女偏差値のある方しかお受けしていませんがよろしいですか?(P80)

ちょっと卑屈かなって思いますが、こういった気持ちになったことって誰にでもあるのかなって。私の場合、オシャレ酒場にこの気持ちがあってなかなかいけません。

 

こういったちょっとした感性の部分の表現に共感できる作家さんは、好きになれる予感がするので、他の作品も読んでみようと思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

タイトルにも入っていて、この物語のテーマの象徴として「豆のスープ」があります。もちろんこれは比ゆなので、何を表しているかは読んで確かめて欲しいのですが、私はこの作品を読んで、自分にとっての「豆のスープ」は何か考えました。

 

たぶん多くの人がこの話を読むと前向きになれて、自分にとっての「豆のスープ」を考えてしまうってことで、おすすめ度は星四つです。

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆☆ , ,