おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『光と影』 渡辺淳一 失楽園の作者の直木賞受賞作

   

書評的な読書感想文189

『光と影』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

渡辺淳一(作家別索引

文春文庫 1975年6月(このブログの画像等は改定版のものです)

人間ドラマ 戦争(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

面白い。外科医でもある作者の短編集。表題作は、ほんの偶然で運命が分かれた二人が再会した後の展開が秀逸。運命が逆に作用していたら?と考えてしまいます。他では「宣告」が良いです。不治の病の告知がテーマ。

 

 

あらすじ

一人は片腕を切断されて廃兵となり、一人は不自由ながら腕がついたまま、栄光への道をまっしぐらに進む。カルテの順序という小さな偶然がわけた人生の光と影を、的確なタッチで構築した直木賞受賞作「光と影」に、「宣告」「猿の抵抗」「薔薇連想」という人生の皮肉を巧みに描き出した三篇を加えた卓抜な作品集。(作品紹介より)

 

 

直木賞の名物選考委員

ドラマで一世を風靡した『失楽園』の作者で、直木賞の名物選考委員だった渡辺淳一さんの直木賞受賞作。作者は直木賞の選考委員を長いことやっていたのですが、賛成反対をはっきりと言う上に、物語に終始して人間を描いていない作品はいっさい認めないスタンスは、結構物議を醸していたようです。ただ、個人的には、スタンスがはっきりしていて嫌いじゃないです。ただ、私が好きな作品はほぼほぼぶった切られています。

 

例えば池井戸潤さんの『下町ロケット』は「わたしはここまで読みものに堕したものは採らない。直木賞は当然、文学賞であり、そこにそれなりの文学性とともに人間追求の姿勢も欠かすべきではない」

 

東野圭吾さんの『容疑者Xの献身』「私は不満である。」「人間を描くという姿勢はいささか安易で、もの足りない。にもかかわらず本作品が受賞したことは、かつての推理小説ブームなどを経て、近年、推理小説の直木賞へのバリアが低くなりつつあることの、一つの証左といえなくもない。」

 

三浦しをんさんの『まほろ駅前多田便利軒』「現代的な雰囲気を描こうとした著者の狙いはそれなりにわかるが、やや受けを狙いすぎて筆がすべりすぎたようである。とくに男二人の生活はボーイズ・ラブの延長のつもりか、大人の男の切実さとリアリティーに欠ける。」

 

お気に入りの作家さんが軒並みぶった切られていて多少癪に障りはしますが、池井戸さんへの批評にあるように「人間追求の姿勢」を一貫して求めているスタンスはぶれてないしこれはこれでありかなとおもいます。

 

 

運命の分かれ道「光と影」

表題作の「光と影」は、ほんの偶然で運命が分かれてしまった二人の軍人・寺内と小武の人生を描いた物語。元外科医だけ合って医療シーンのリアリティはさすが。また、この物語のすごいところは、ほんの偶然で光(寺内)と影(小武)、天と地ほども人生が変わってしまった二人が出会った後の話。

 

ちょっとした偶然で運命が分かれてしまったと知った時の、影の側の人間・小武の感情の爆発がすごい。ただ、運命の分かれ道で物語と逆の選択があったとしたら、結果はどうなっていたか、考えさせられます。結局、寺内は光のほうへ、小武は影のほうへ行くのではないかと、私は思ってしまいます。作中では、運命なんて人間の能力以外の些細なことで決まるとしきりに言われていますが。

 

 

癌の告知がテーマの「宣告」

物語のテーマは癌の告知

「優れた芸術家だけには死期を知らせるべきだ」(P112)

との考えのものと、死期を知らされた画家の晩年を描いた物語。告知する側の葛藤、された側の苦悩が描かれていて、魂が揺さぶられます。最後に画家が残した絵が意味深です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

元々辛口の直木賞選考委員であることは知っていたので、あれだけ言うんだからどんな作品を書くのだろうと、若干斜に構えて読み始めましたが、あっさり白旗をあげます。面白かったです。

 

病気や怪我をきっかけに、人間のむき出しの感情が描かれてて、「人間追求の姿勢」ってのは、こういったことかなと割りと納得できました。そんなわけで、おすすめ度は上に上げた渡辺さんに批評された私のお気に入りの作品たちと同じ、星四つです。

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