おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ときぐすり』 畠中恵 取り戻した日常

   

書評的な読書感想文183

『ときぐすり』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

作者名(作家別索引

レーベル 2015年7月

時代 ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

前回の衝撃的な展開に比べ、今回は何があるわけでもなく徐々に日常を取り戻す麻之助。平凡な日常を取り戻させるのは、友情とタイトルにあるように「とき」です。個別の短編では高利貸しの友情物語が切ない。

 

 

あらすじ

女房のお寿ずを亡くした麻之助だが、町名主・高橋家の跡取りとして裁定に追われる毎日。「人が人を、大事だって思う気持ちにつけ込んで、下司なことをするんじゃねえよ」――幼馴染で親友の八木清十郎と相馬吉五郎の助けもあり、魂の抜けたような麻之助も徐々に回復してゆく。大人気「まんまこと」シリーズ第四弾。(作品紹介より)

 

 

『まんまこと』シリーズ第四弾

以前紹介した、『まんまこと』、『こいしり』、『こいわすれ』の続編です。基本的には連作短編の形式ですが、物語全体のテーマがあるので、順番に読むことを強くおすすめします。特に、前作が衝撃的な展開だったので、それを踏まえて今作を読むほうがより楽しめると思います。

 

基本的な物語は江戸時代の裁判官・町名主の息子である主人公・麻之助とその仲間が、奉行所で裁くほどではない揉め事や謎を解決する話。六つの短編からなっていて、どの話も幾つのものトラブルが重なってどうやっても解決できないようで、実はどのトラブルも根っこはつながっていて、一気に解決すると言ったパターンが多いです。

 

個人的に気に入った話は「ともすぎ」。前作にも出てきた高利貸しの丸三の話。丸三は、友人の吉五郎がよからぬトラブルに巻き込まれていないかと心配して麻之助に相談を持ちかけます。トラブルは意外な展開を見せますが、麻之助たちの活躍で解決します。

 

このとき、60歳の高利貸しの丸三が二周り以上年下の友人の吉五郎のためにかなり張り切ってがんばります。そのがんばる理由が物語の最後に明かされるのですが、とても切なくて身につまされます。

 

 

取り戻した日常

前作の『こいわすれ』で奥さんと子供を同時に亡くすという衝撃的な展開の後に迎えたこの作品。物語の前半では麻之助は、まだショックを引きずっていますが、後半では徐々に日常を取り戻しています。

 

この日常を取り戻す助けになったのは、幼馴染との友情とタイトルにある通り「とき」でした。「とき」が流れることそのものが「くすり」となって、麻之助の日常を取り戻すのですが、

″ときぐすり″というものを、麻之助は確かに日々、皆から受け取っていたのだ。(P349)

とあるように、周りの皆から受け取っていたと表現するのが個人的には好きですね。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

前回の衝撃的な展開に比べると、いい意味でも悪い意味でも平凡な今作。『まんまこと』らしい町名主の裁定ミステリーは楽しめますが、キーキャラクターのお由有もほとんど出てきませんし、ちょっと物足りなさも否めないってことで、おすすめ度は星三つです。

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