おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『蒲田行進曲』 つかこうへい 蒲田が舞台ではない

   

書評的な読書感想文182

『蒲田行進曲』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

つかこうへい(作家別索引

角川文庫 1982年8月

友情 人間ドラマ(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

歪んだ男女の三角関係。悪い人はいないけど不器用なせいで上手くいかない人たちの悲喜劇です。大部屋俳優のヤスの小物な感じにイライラしたのですが、それはたぶん私の中にも似たところが有るからだと思います。

 

 

あらすじ

映画『新撰組』で、はじめて主役を演ることになった銀四郎。その恋人で、かつてのスター女優小夏。そして銀四郎を慕う大部屋のヤス。銀は、妊娠した小夏をヤスに押しつけようとし、小夏は銀を諦めてヤスを愛しようとつとめ、ヤスは「大好きな銀ちゃん」の言うままに、小夏を引き受け、小夏を愛し、めとり、小夏との生活を維持していこうとする。――サディスティックなほどにマゾヒスティックに、みずからとひとを傷つけることでしか成立しえない「現代の愛」を描き、衝撃的な話題を読んだ。第86回直木賞受賞。(作品紹介より)

 

 

舞台や映画で有名な直木賞受賞作

もともとは作者のつかこうへいさんの劇団で上演された舞台が最初です。それをつかさんが小説化、さらにはつかさんが脚本で映画化して大ヒットしました。

 

物語は京都の映画撮影所が舞台で、初主演を手に入れた俳優・銀ちゃん、銀ちゃんを慕う大部屋・俳優ヤス、銀ちゃんの子を身ごもりながらも、銀ちゃんの勝手でヤスに押し付けられ結婚させられたかつてのスター女優・小夏の三人が主な登場人物。

 

タイトルの蒲田行進曲は戦前に映画の撮影所が蒲田にあって、そこの所歌が蒲田行進曲です。物語の舞台は京都の撮影所(今は太秦映画村)ですが、大部屋俳優達のスピリットはいまだ蒲田にあります。

 

 

銀ちゃんとヤスの前半

あらすじだけを見ると銀ちゃんもヤスもダメ男で最低野郎ですが(実際そうですが)、この銀ちゃんとヤスの関係が何とも切ない。わがままな銀ちゃんにいくら罵倒され殴られようとも、それは信頼の証として銀ちゃんを慕い、押し付けられた小夏を大切に愛想とするヤス。

 

この銀ちゃんとヤスの病的な主従関係というか精神SM関係が異常だとは思うのですが、ちょっと共感できたりもします。ものすごいあこがれている人からわがままや理不尽なことを言われると甘えられているような気になってうれしくありませんか。私が変態なのでしょうか?

 

 

小夏とヤスの後半

上に書いた銀ちゃんとヤスの関係は小夏が来ることでバランスが崩れます。銀ちゃんに押し付けられた小夏をヤスは愛して、お腹の子どもの頼れる父親としてがんばろうとします。

 

ただ、ヤスの中の理想の頼れる男は銀ちゃんしかいません。映画で主役を張れるようなスターの銀ちゃんならわがまま勝手でも許されますが、大部屋俳優のヤスがそれをすると、小物感がものすごいです。

 

小物感全開で単なる嫌な奴になってしまったヤスですが、なんだか共感できてしまう自分がいました。たぶん私の中にも、憧れの人を真似て大物ぶりたい願望があるからだと思います。

 

後半のヤスのわがままぶりにはイライラさせられましたが、そんな小物なヤスに共感する小物な私がいました。非常に残念ですが、共感できるのはスター俳優の銀ちゃんではありませんでした。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

暴力的な主従関係というか精神的SMの関係は、昭和の香り漂う感じで、ちょっと今の時代にはなじみにくいところがあるかもしれませんが、人間に潜在的に存在する精神世界を表しているんじゃないかと思ったりもします。

 

誰にでもおすすめではありませんが、わがままを甘え感じた経験のある人はちょっと共感できるかもってことで、星三つです。

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