おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『告白』 湊かなえ 圧倒的な第一章

   

書評的な読書感想文179

『告白』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

湊かなえ(作家別索引

双葉文庫 2010年4月

サスペンス ミステリー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

重いし救いもない話ですが、引き込まれるし、考えさせられるし、何より面白い。特に第一章の存在感が圧倒的です。また、語り手が変わることで色々なテーマが浮かび上がり、読み手によって捉え方が変わりそうです。

 

 

あらすじ

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から、この物語は始まる。語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りにされていく。衝撃的なラストを巡り物議を醸した、デビュー作にして、第6回本屋大賞受賞のベストセラーが遂に文庫化!“特別収録”中島哲也監督インタビュー『「告白」映画化によせて』。(作品紹介より)

 

 

圧倒的な第一章

物語はとある学校のホームルームを舞台に始まります。担任の女性教師が生徒たちに衝撃の告白をします。その内容は女性教師の愛娘を学校内で亡くなっているのですが、その死因が生徒による殺人であるということです。

 

淡々としゃべっているのですが、犯人に強烈な皮肉を言ったり、犯人が誰なのか他の生徒たちに自然に気付かせるようにしたりしながら、徐々に犯人を追いつめ、最終的にはとんでもない方法で犯人に罰を与えます。

 

冷静なのに徐々に正気を逸していく主人公の語りは圧倒的な存在感と、背すじが寒くなるような凄みのある恐怖があります。私はこの第一章で一気に物語に引き込まれましたし、この時点で湊さんの他の作品も読んでみようと決めました。

 

興味をもった人はぜひ立ち読みでもいいので、一章の半ばくらいまで読んでみることをおすすめします。きっと買ってしまいます。

 

 

浮かび上がるテーマ

物語は六章からなり、基本的に各章ごとに異なる語り手が、このある生徒による殺人について独白します。犯人やその家族などの独白を淡々と描かれていく過程で、事件の真相や事件の影響、そして物語のテーマが浮かび上がってきます。

 

私が考えるこの物語のテーマは、母親、教育、罪と罰、少年犯罪などだと思います。ただ、章ごとに語り手が変わることで事件に対する見方も変わるのでさまざまなテーマが浮かび上がってきますし、読者の年齢や立場なんかによっても共感できる登場人物が変わることで、この物語から受け取る印象も変わるのかなと思います。

 

私の場合、過去に塾の講師をやっていたことがあり、ちょうど物語り出てくる年代の子供たちを教えていたためか教師サイドで物語を読みました。教育で犯罪は防げるのか?など考えさせられることも多々ありました。

 

シニカルな視点

個人的に気になったのは物語の随所にあるシニカルな視点。これに共感できる人はきっとこの物語を楽しめるはず。

道を踏み外して、その後更正した人よりも、もともと道を踏み外すようなことをしなかった人の方がえらいに決まってます。でも残念なことに、そういう人には日常ほとんどスポットが当てられません。学校でも同じです。そして、それが毎日まじめに生活している人に自己の存在価値への疑問を抱かせ、時としてマイナスの思考へと向わせていく原因になっているのではないでしょうか。(P16)

特に後半の視点が強烈な皮肉かなと。教育の現場ってこういう矛盾が良くあるような。

 

三年生の担任を持つと、受験を前にして「この子はやればできるんです」と保護者の方からよく言われるのですが、この子、の大半はこの分岐点で下降線をたどることになった人たちです。「やればできる」のではなく「やることができない」のです。(P51)

教える側がこういうことを言うと言い訳に聞こえますが、実際にこういう子は多いような。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

基本的には明るいエンタメ小説が好きな私ですが、この重く救いのない物語はすごく面白かったです。物語の結末もかなり強烈なものですが、ある意味共感できてしまいました。

 

上にも書きましたが、湊かなえさんの他の作品も読んでみようと思いますし、他の作品もこのレベルで面白かったら、最新版の「今好きな作家で打線を組んでみた。」を考えたら食い込んできそうな予感すらしました。

 

ただ、暗い話ですし、無条件ですべての人におすすめかというとちょっと厳しいので、ちょっと残念ですが、おすすめ度は星四つに留めておきます。

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