おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

*

『月は幽咽のデバイス』 森博嗣 保呂草が胡散臭い

   

書評的な読書感想文178

『月は幽咽のデバイス』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

森博嗣(作家別索引

講談社文庫 2003年3月

ミステリー サスペンス(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

レギュラーキャラの個性がどんどん際立っていて楽しく読めました。トリックは多少アンフェアな気がしますが、従来のミステリーのアンチテーゼになっていると思います。たぶん、アンフェアっぽいのはわざとか。

 

 

あらすじ

薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。紅子が看破した事件の意外な真相とは!?(作品紹介より)

 

 

Vシリーズ第三弾

以前紹介した『すべてがFになる』の森博嗣さんのミステリーシリーズで瀬在丸紅子を主人公とした、「Vシリーズ」の第三弾です。シリーズ作品の『黒猫の三角』『人形式モナリザ』と同様、というかそれ以上に今回もレギュラーキャラの掛け合いが楽しいです。

 

主人公の瀬在丸紅子は相変わらずわがままで何を考えているのか分からず、元旦那・林の現在の彼女の祖父江七夏との緊張感のあるやり取りは見ものです。保呂草はなんだか胡散臭い商売をやっており、ちょっと怪しげな行動も多かったりします。個人的にお気に入りの小鳥遊練無はちょっとしたミッションインポッシブル的なシーンもあったりして活躍してくれます。

 

前の二作の紹介でも書きましたが、レギュラーキャラクターたちの掛け合いがこのシリーズの醍醐味だと思うので、『黒猫の三角』『人形式モナリザ』と先に読んで各キャラの関係性や性格をつかんでから今作を読んだほうがより楽しめると思います。

 

 

アンフェアな気がしないでもないトリック

これまた前二作の紹介の時にも書きましたが、今回のトリックもちょっとアンフェアなにおいがします。解説でも

最初から伏線は張られているし、それをフェアと取るかアンフェアと取るかは、読み手次第だろう。(P403)

なんて書かれているように、考え方次第でアンフェアに取れなくもないです。まだこの先「Vシリーズ」は続くので断言は出来ませんが、ちょっとアンフェアな感じのトリックがこのシリーズの特徴のひとつに成るかもしれません。少なくとも今までの三作はどれもちょっとアンフェアな香りがしたので作者も意識しているのではないでしょうか。

 

 

従来のミステリーのアンチテーゼ

今回のトリックの肝は密室にあります。密室の中には床一面に血が飛び散り、凄惨な死体が倒れています。誰が何のためにどうやって事件を起したのか、物語では徐々に謎が明らかになりますが、その過程で従来のミステリーを皮肉るような真相が現れます。

 

ミステリー小説の中にある固定観念みたいなものを皮肉る真相は、なかなか興味深いものがありました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

今回は起きてる現象を先入観なしに観察し、そこから合理的な答えを出す考え方が理系っぽいかなと思ったので、そういった意味では『すべてがFになる』などとつながるところはあるかなと思いました。

 

ただ、基本的にはこのシリーズのキャラクターとトリックの傾向を気に入った人以外にはおすすめできないので、おすすめ度は控えめの星三つです。

よろしかったらクリックお願いします。

 

 - ☆☆☆ , ,