おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『ストーリー・セラー』 有川浩 対になる二つの物語

   

書評的な読書感想文177

『ストーリー・セラー』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

有川浩(作家別索引

幻冬舎文庫 2015年12月

恋愛 お仕事(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

女性小説家が主人公の夫婦の物語。対になる二つの中編からなり、一つは妻が、もう一つは夫が難病にかかってしまいます。作家の生き様や恋愛観は興味深く、終盤はちょっとあざといかなと思いつつウルッときました。

 

 

あらすじ

妻の病名は、致死性脳劣化症候群。複雑な思考をすればするほど脳が劣化し、やがて死に至る不治の病。生きたければ、作家という仕事を辞めるしかない。医師に宣告された夫は妻に言った。「どんなひどいことになっても俺がいる。だから家に帰ろう」。妻は小説を書かない人生を選べるのか。極限に追い詰められた夫婦を描く、心震えるストーリー。(作品紹介より)

 

 

二つの中編

毎度おなじみ「今好きな作家で打線を組んでみた。」で四番に入っている有川浩さんの作品。今回の作品は二つの対になる中編からなっています。どちらも女性小説家が主人公で、最良の読者であり理解者である男性と出会い、小説家として花開くとともに男性と結婚して幸せになるストーリーです。

 

ただし、一つ目の物語では女性が、二つ目では男性が難病にかかってしまいます。

 

対になる中編二本からなる構成は以前紹介した『ヒア・カムズ・ザ・サン』と似ているかもしれません。ただ『ヒア・カムズ・ザ・サン』はまったく同じ設定で二種類のストーリーを描いていますが、今作は対になる設定(病気にかかるの人が違うので)の二つの物語になっています。

 

 

作家の生き様

物語の主人公が女性小説家で、作者も女性なのでご本人の考えや経験が反映しているのかなって思ってしまうところが多々ありました。主人公も作者も質の悪いネットメディアに苦しめられているところとか似ているので、フィクションなので現実とあまり混同してもまずいのかなと思いつつも、悪い意味ではなく作者の顔がちらついて興味深いことが多かったです。

 

二本の物語はそれぞれ、Side:A、Side:Bと名付けられていて、Aの主人公はなかなか鮮烈で男前な人物です。作品に何かとケチをつけたがる文学青年崩れの親戚には

「あたしは、あたしが書きたいものを書くために作家になったんだ!あんたたちの代わりに書くためじゃない!あんたたちに書きたいものや作家としての理想とやらがあるならあんたたちが自分で作家になって書け!」(P96)

なんて啖呵をきっていますが、これなんて有川さんの心の叫びでもあるのかなって思ってしまいます。これ以外にもミスとした編集者を怒鳴りつけシーンなんかも男前で見ものです。

 

また、Side:Bでは恋愛観が見て取れます。

自分の好きな男が読書を好きだとしたら、その男の一番好きな作家が自分じゃないなんてことが我慢できるものか。(P188)

この表現とか個人的にすごく好きです。やっぱそう思うよね。

 

これ以外にも、おそらく作家としての作者の経験が反映されている描写が多々ありました。例えば誤植について

「あれはね、観測したら増えるの!観測したら必ず発生するの!自分と担当さんと校閲さんと、三人がかりで二回も三回もチェックするのに、本ができたら必ず生き残りがいるの!」(P171)

なんていってます。新種の生物か!

 

 

物語の終盤

夫婦のどちらかが難病にかかるという設定なので、物語の終盤はどちらの物語も重い展開になります。正直ちょっとあざといかなとは思わなくもないのです。ただ、主人公夫婦の出会いから絆が深まる過程が描かれているため感情移入してしまっているので、二つの物語ともウルッと来てしまいました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

有川浩さんに興味をもった人が始めに読むならこの作品ではなく、『阪急電車』や『図書館戦争』を進めます。単純に有川さんの作品の中ではこの二つがダントツに面白いと思うので。

 

ただ、有川さんの作品をいくつか読んで好きになりかけている人には、この作品をおすすめするかもしれません。上に書いたように、作者の考えや経験が反映されていて興味深いからです。そんなわけで、若干おすすめする範囲が狭いので、おすすめ度は星三つです。

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