おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『鍵のない夢を見る』 辻村深月 ドラマも見てみたい直木賞作品

   

書評的な読書感想文170

『鍵のない夢を見る』(文庫)

おすすめ度☆☆☆(星数別索引&説明

辻村深月(作家別索引

文春文庫 2015年7月

人間ドラマ 恋愛(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

ちょっと歪んだ心を持つ女性が、事件に巻き込まれる短編5本。歪み具合にリアリティがある上、微妙に共感できてしまい、読んでいて居心地が悪くなってしまいます。なのに読むのをやめられないのは、作者の筆力故か。

 

 

あらすじ

どうして私にはこんな男しか寄ってこないのだろう?放火現場で再会したのは合コンで知り合った冴えない男。彼は私と再会するために火を?(「石蕗南地区の放火」)夢ばかり追う恋人に心をすり減らす女性教師を待つ破滅(「芹葉大学の夢と殺人」)他、地方の町でささやかな夢を見る女たちの暗転を描き絶賛を浴びた直木賞受賞作。(作品紹介より)

 

 

理解できる女性と理解できない男性

物語はちょっと感覚が歪んでいるように見える、地方に在住の女性が主人公の五編の短編から成ります。生真面目で変にプライドの高い女性が主人公の「石蕗南地区の放火」、現実的ではない夢を追いかける男性に消耗させられるのに離れなれない「芹葉大学の夢と殺人」、DV男性に絡めとられる女性を描く「美弥谷団地の逃亡者」など。

 

どの女性の歪み具合も微妙に共感できてしまい、客観的に見ればおかしいけどいざ自分が当事者になったらおかしいことに気付けるか、ちょっと迷ってしまう絶妙なリアリティがあります。

 

この微妙に共感できてしまう主人公たちの歪み具合のおかげで、読んでいてちょっと居心地は悪いです。あまり好きではない自分の顔を鏡で見せられているようで。なのに読む手が止められないのは、作者の筆力の高さなのおかげかなと思いました。

 

一方でいくつかの短編に出てくる男性たちはまるっきり共感できないというか、ばっちり歪んだ人物で描かれています。DV男に、勘違いナルシスト、ありえない夢を追いかけるシスコンと。このばっちり歪んだ男性がいるからこそ、微妙に歪んだ女性たちにより共感できました。

 

 

お気に入り

個人的に特に気に入ったのは2遍。一つは「美弥谷団地の逃亡者」。DVでストーカー気質もある彼氏に絡め取られる女性の話。二人は家出することになるのですが、意外な結末がまっています。また、文章がすごく映像的で、頭の中に映画のように映像が浮かびました。20分くらいのショートムービーにしてほしいです。と思って、調べてみたら、ドラマ化してました。いや、これは見てみたいです。

 

もうひとつは「君本家の誘拐」。育児ノイローゼ気味の女性がベビーカーに子供を乗せてショッピング中に、一瞬目を放した隙に子供と誘拐されてしまう話。女性が育児を回想しながら、自分の子と責める描写が切実なのと、最後のオチが秀逸です。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

なんだか共感してしまう歪みを持った女性たちの生き方を描いたこの作品は、さすが直木賞といえます。

 

ただ、どの話もハッピーエンドではありません。また、上にも書きましたが、あまり好きではない自分の顔を鏡で見せられているような居心地の悪さがあります。なので、爽快な読後感は期待できません。したがって、おすすめ度は控えめの星三つです。

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