おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『せどり男爵数奇譚』 梶山季之 妖しげな古書の世界

   

書評的な読書感想文169

『せどり男爵数奇譚』(文庫)

おすすめ度☆☆☆☆(星数別索引&説明

梶山季之(作家別索引

ちくま文庫 2000年6月

ミステリー ホラー(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

古書にまつわるミステリー連作短編集。前半の三作までは古書に隠された暗号の話などマイルドな物。が、後半は古書の為には犯罪も厭わない人の話に。グロい描写もありますが、妖しげで不思議な話は読む価値ありです。

 

 

あらすじ

“せどり”(背取、競取)とは、古書業界の用語で、掘り出し物を探しては、安く買ったその本を他の古書店に高く転売することを業とする人を言う。せどり男爵こと笠井菊哉氏が出会う事件の数々。古書の世界に魅入られた人間たちを描く傑作ミステリー。(作品紹介より)

 

 

『ビブリア古書堂の事件手帖』から

今回の『せどり男爵数奇譚』は、以前紹介した『ビブリア古書堂の事件手帖』で取り上げられていて、気になっていた作品です。

 

古書好きが高じて古本屋を始めた主人公が、筆者に語り聞かせる物語をまとめた話で、ミステリー仕立ての連作短編集になっています。『ビブリア』の作者の三上延さんは、『栞子さんの本棚』のなかで

古書ミステリーというと、常軌を逸したマニアたちが稀覯本をめぐって跳梁跋扈、という世界を連想する方は多いはず(私もその一人です。)そのイメージを形成した古典的な作品の一つと言っていいでしょう。個人的にはリサーチの掘り下げ方や、ストーリーと古書の絡め方に目を瞠ったのですが、自分にはこういう方向性は無理だな、という諦めのきっかけになった小説でもあります。(『栞子さんの本棚』P305)

と評しています。これも以前紹介した『古書収集十番勝』と共に、『ビブリア』の原点というか、きっかけになった作品といえるでしょう。『せどり男爵数奇譚』のほうは、ちょっとだけ『ビブリア』と内容的にもリンクしているので、ファンの人が読むとより楽しめるかもしれません。

 

 

マイルドな前半

物語は6本の短編から出来ているのですが、前半の三作品はマイルドな作品というか、出てくる古書マニアの人たちの心理に、凡人の私でも比較的共感できる作品です。

 

例えば、主人公のせどり男爵こと笠井菊哉が古書にはまったきっかけは

……それと云うのは、その全集の頁のあいだに、細い長い髪の毛がはさまっていたり、六巻目の中ごろの頁に、口紅をつけた指先で頁を繰った痕跡が、歴然と残っているのを発見したからでしてね。(P19)

古書にまえの持ち主の痕跡を見つけて想像を膨らます気持ちはわかるような気がしました。

 

この他にも、古書に暗号名た文章を残し、それを自分の子供の残したマニアの話など、わりと共感でき素直にワクワク出来る話でした。

 

 

古書狂いの後半

後半の三作品は古書狂いと表現するのに相応しい、行き過ぎた古書マニアが出てくる話です。

 

古書ためなら犯罪すら厭わない、正直、私の理解を超えたマニアたちが出てきます。そのマニア度は四話、五話、六話と徐々に上がっていきます。最後の六話に出てくる本の装丁を愛するあまり、行き着く所まで行き着いた男の話は、グロくて気持ち悪いのに読む手が止まりませんでした。先日紹介した『江戸川乱歩傑作選』に通じるような、気持ち悪くも怪しく魅力的な物語です、

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

『ビブリア』の三上さんが「自分にはこういう方向性は無理だな」と言っているように、ちょっと『ビブリア』とはテイストは違いますが、随所に影響は見られるのでグロいのが苦手なにと以外の『ビブリア』ファンにはおすすめです。

 

また、『ビブリア』にまったく興味がない人でも江戸川乱歩的な怪奇物やミステリーが好きな人にはかなりおすすめってことで、星四つです。

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