おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『時代小説の愉しみ』 隆慶一郎 信長は天才、信玄は最強

   

書評的な読書感想文167

『時代小説の愉しみ』(文庫)

おすすめ度☆☆(星数別索引&説明

隆慶一郎(作家別索引

講談社文庫 1994年2月

エッセイ 時代(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

エッセイと戦国武将を独自の視点で再評価した歴史読み物の二本立て。信長は天才で、信玄は最強。作者の小説によく出てくる「道々の輩」と一向一揆のつながりの話なども興味深いです。隆慶一郎ファンなら必見。

 

 

あらすじ

志を立て、それに殉じた英傑たち。彼らの誇りはいまなお烈々と訴えかけてくる。その志・誇りに光を照射してみる。織田信長・武田信玄・明智光秀らに新解釈を加え、歴史上の人物の器量と命運をダイナミックにはかりながら、人間の面白味を発見してゆく。著者の風格と風貌を鮮やかに伝える歴史エッセイ集。(作品紹介より)

 

 

時代小説家のエッセイ

今好きな作家で打線を組んでみた。」で八番に入っている隆慶一郎さんの作品。東大仏文科を卒業し、脚本家として活躍した作者の若いころのエピソードや歴史観などを書いたエッセイと、織田信長や武田信玄などを作者なりに再評価した歴史読み物をまとめたのがこの作品。

 

エッセイパートでは作者の歴史観や考え方が垣間見えて興味深いです。例えば、作者は時代小説を「書く」愉しみを

些細な史実にこめられた感動、さりげない言葉に秘められた目くるめくような美しさ。史料を読むとは、そうしたものとのめぐり逢いを望んでいるということだと僕は思う。(P14)

なんて表現しています。そして、些細な史実にこめられた感動の例として忠臣蔵の大石内蔵助夫妻のあるエピソードを引用しています。これは、読んで確かめてほしいのですが、確かに感動があります。

 

他には隆さんは織田信長に対する最大の抵抗勢力一向一揆について、その担い手は

決して農民ではなく、むしろワタリ(渡り)と呼ばれる、水の世界に生きる海人・舟人ら漁業と流通の担い手たちや、山を旅する木地師・金掘り・鍛冶など技術集団、つまり土地をもたぬ非農民(P52)

だとし、この中には隆さんの小説に良く出てくる道々の輩といった自由民も含まれていると述べています。

 

一向一揆がどういった存在で、信長とどう争ったかなどが述べられており、小説の背景が理解できるような気がして面白いです。

 

 

歴史的読み物

歴史的読み物のパートでは織田信長や武田信玄、北条氏康を作者なりに再評価している読み物です。

信長に関しては、「十六世紀の日本は史上稀に見る一箇の天才を生んだ。それが織田信長である。(P116)」と言い切っています。そして、比叡山焼き討ちや一向一揆の虐殺を丁寧に検証しながら、最後には信長の善悪にまで言及しています。

 

私は作者の意見のすべてに納得は出来ませんでしたが、世の中の枠組みを破壊した信長は天才と呼ぶにふさわしいのかなと思いました。

 

他には、なぜ「父親追放」と「子殺し」をしたかを中心に信玄の一生を再評価しています。私はこの文章を読んで、戦国最強の武将は信玄かなと思いました。足りなかったのは運。生まれた時期、場所、ライバル、寿命など、このうちのいくつかでも恵まれていたら、天下を取っていたかもと思いました。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

作者の隆慶一郎さんテイスト満載の作品です。歴史観や時代小説に対する考え方はもちろん、若いころのエピソードや脚本家時代のことなど、隆さんのバックボーンも垣間見せます。

 

ただ、隆さんテイスト満載過ぎて、隆慶一郎ファン以外の人は、楽しみにくいかなって事で、おすすめ度は辛目の星二つです。

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