おすすめ本の輪

小説のレビューというか書評的な読書感想文みたいなのを書いてきます。

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『春琴抄』 谷崎潤一郎 正直、背筋が凍る

   

書評的な読書感想文163

『春琴抄』(文庫)

おすすめ度☆(ジョーカー的な意味で)(星数別索引&説明

谷崎潤一郎(作家別索引

新潮文庫 1951年1月(ブログで使っている画像等は新装版のものです)

純文学 恋愛(ジャンル別索引

 

 

おすすめポイントを百文字で

美しい文章で究極の愛と献身を描いた物語。盲目でドSな美女・春琴に仕える佐助の愛と献身を中心に描いていますが、春琴の美貌が傷つけられた時の佐助の選択に、正直背すじが凍る気持ちがしました。これはすごい。

 

 

あらすじ

盲目の三味線師匠春琴に仕える佐助の愛と献身を描いて谷崎文学の頂点をなす作品。幼い頃から春琴に付添い、彼女にとってなくてはならぬ人間になっていた奉公人の佐助は、後年春琴がその美貌を何者かによって傷つけられるや、彼女の面影を脳裡に永遠に保有するため自ら盲目の世界に入る。単なる被虐趣味をつきぬけて、思考と官能が融合した美の陶酔の世界をくりひろげる。 (作品紹介より)

 

 

盲目のドS美女

物語の主人公は春琴という三味線の美人女師匠です。彼女は大阪の裕福な商人の娘でしたが、幼い頃に盲目となりました。そして、彼女の身の回りの世話や外出時の手引きをしたのが佐助という男性です。

 

物語のテーマはこの佐助の愛と献身なのですが、春琴はもともと裕福な商人のお嬢さんなので甘やかされていた上に、盲目になって両親が不憫に感じ、よりいっそう甘やかして育てたため、ものすごくわがままで攻撃的な、特に佐助に対してはいわゆるドSな女性です。そのことに関して

春琴の剛情と気儘とは斯くの如くであったけれども特に佐助に対するそのようなのであって孰れの奉公人にもという訳ではなかった元来そういう素質があったところへ佐助が務めて意を迎えるようにしたので、彼に対してのみその傾向が極端になって行ったのである彼女が佐助を最も便利に思った理由も此処にあるのであり佐助も亦苦役と感ぜず寧ろ喜んだのであった彼女の特別な意地悪さを甘えられているようにとり、一種の恩寵の如くに解したのであろう(P18)

とあり、二人の関係を端的に表しています。

 

 

究極の愛と献身

二人の関係は変わらないまま大人になります。春琴家を出て、三味線の師匠として独立し、佐助もそれについていきます(独立といっても裕福な実家の援助で生活していますが)。

 

ここまでの話だと、単に美しい文章で描かれた特異な絆で結ばれた主従の話ですが、春琴が顔に火傷を負ったことで物語は一変します。火傷を負った春琴は

余人は兎も角お前にだけはこの顔を見られねばならぬと勝気な春琴も意地が挫けたかついぞないことに涙を流し(P58)

といった様子です。それに対し佐助は

必ずお顔を見ぬようにいたします(P58)

と答えます。この後取った佐助の選択が、ある意味、究極の愛と献身を表していて、衝撃的です。私は背筋が凍りました。

 

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、これはすごい。

 

 

書評的な読書感想文のまとめ

ドSな主人とドMな召使の究極の献身、究極の愛を谷崎潤一郎らしい美しい文章で描いた作品。佐助が選択した衝撃的な行動。

 

個人的には星五つにしたいのですが、SM的な精神の世界でちょっと受け付けない人もいるかもしれないので、ジョーカー的な意味で星一つです。

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